物流効率化法|特定荷主の中長期計画の書き方【記載例付き】

物流効率化法では、特定荷主に対して「物流統括管理者の選任」「中長期計画の作成」「定期報告」が義務化されました。しかし実務では、様式を前にして「どこから整理すればよいのか」という判断に迷うケースが少なくありません。
本記事では、特定荷主の中長期計画について、作成手順・記載例・発注構造の問題・物流法務リスクまで解説します。

この記事を書いた人
行政書士 楠本浩一(行政書士法人運輸交通法務センター 代表)
パナソニックの物流部門・物流子会社にて20年以上物流法務を担当
著書:荷主と物流会社のための物流下請法と「法令違反」防止ガイド

目次

1.特定荷主の中長期計画とは【1分でわかる】

2026年4月、物流効率化法が全面施行されました。一定規模以上の貨物を扱う荷主企業には、物流効率化の取組が法的義務として課されます。その中心となる制度が、特定荷主による中長期計画の作成と提出です。

物流効率化法では、荷主企業が主体となって、積載効率の向上荷待ち・荷役時間の短縮などの改善に取り組むことが求められます。

(1)物流効率化法で荷主に課される3つの義務

特定荷主に指定された企業には、次の3つの義務が課されます。

  • 物流統括管理者の選任
  • 中長期計画の作成・提出
  • 定期報告の提出

これらは努力義務ではなく、違反した場合は勧告・公表等の対象となる法的義務です。

(2)特定荷主の基準(年間貨物重量9万トン)

前年度に貨物自動車運送事業者を利用して輸送した貨物重量が、年間9万トン以上の荷主は特定荷主として指定されます。

また、主に発荷主を意味する第一種荷主と着荷主を意味する第二種荷主に分かれます。

(3)中長期計画の提出期限

中長期計画の提出期限は次のとおりです。

2026年度:10月末
2027年度以降:毎年7月末

計画内容に大きな変更がない場合、中長期計画の提出は5年に1回で足ります。ただし、物流効率化の取組状況については毎年定期報告を提出する必要があります。

(4)この記事でわかること

この記事では、特定荷主の中長期計画について次の内容を解説します。

  • 特定荷主制度の全体像
  • 中長期計画の作成手順
  • 中長期計画の記載項目とテンプレート
  • 積載効率・荷待ち時間・荷役時間の記載例
  • 計画が進まない発注構造の問題
  • 物流効率化法と取適法(旧下請法)の関係

2.物流効率化法と特定荷主制度の全体像

(1)第一種荷主と第二種荷主

物流効率化法では、荷主を輸送の関係性に応じて第一種荷主第二種荷主に区分しています。両者の違いは、貨物を輸送するトラックとの運送契約の有無にあります。

第一種荷主

自社が運送契約を結んだトラックによって貨物を輸送している荷主を指します。製造業や卸売業などが、出荷業務として運送会社に輸送を委託しているケースが典型です。特定第一種荷主の基準は、この輸送が年間9万トン以上であることです。

第二種荷主

自社が運送契約を結んでいないトラックによって貨物の入荷や納品を受けている荷主です。小売業や建設業など、サプライヤー側が手配したトラックで資材や商品が納品される企業が該当する場合があります。特定第二種荷主の基準は、この受入れが年間9万トン以上であることです。

つまり、第一種荷主は自社が輸送を委託する立場、第二種荷主は他社が手配した輸送によって貨物を受け取る立場という違いがあります。

実務では次の2点を見落としやすいため注意が必要です。

  • 出荷だけでなく、サプライヤーからの入荷も貨物重量に含まれる
  • 自社拠点間の横持ち輸送も算入される

製造業・小売業・建設業など、自社が運送契約を結ばないトラックから資材や製品を受け取る企業は、第二種荷主に該当する可能性を確認する必要があります。出荷側だけを確認して「該当しない」と判断するケースが実務では多いため、入荷側の貨物重量も含めて整理することが重要です。

(2)中長期計画と定期報告の違い

特定荷主に指定された企業は、物流効率化の取組について中長期計画の作成定期報告の提出を行う必要があります。

中長期計画は、物流改善の方針や取組内容を整理した「設計図」にあたる文書です。一方、定期報告はその計画に基づく取組状況を毎年報告する文書です。

両者の違いを整理すると次のとおりです。

項目中長期計画定期報告
内容物流効率化の取組方針・数値目標などの設計図取組の実施状況・成果の報告
提出時期2026年度:10月末2027年度以降:毎年7月末 毎年提出(具体的な期限は別途定める)
関係改善の計画を作成する計画に基づく取組状況を報告

(3)中長期計画の対象となる改善テーマ

物流効率化法では、中長期計画において取り組むべき改善テーマとして、主に次の3つの指標が示されています。

積載効率

トラック1台あたりの積載率を示す指標です。積載効率が低い輸送が増えると、同じ貨物量でも必要なトラック台数が増え、ドライバー不足や輸送コストの増加につながります。

荷待ち時間

トラックが積込みや積み降ろしのために待機する時間を指します。荷待ち時間が長くなるほどドライバーの拘束時間が増加し、長時間労働の大きな要因となります。

荷役等時間

積込み・積み降ろし・検品などの作業にかかる時間です。荷役作業が長時間化すると、ドライバーの運転時間以外の拘束時間が増え、結果として労働時間の長期化を招きます。

これらの指標は、いずれもトラックドライバーの長時間労働の要因となっている問題であり、物流効率化法では荷主企業が主体となって改善に取り組むべき指標として位置付けられています。

3.特定荷主の中長期計画の書き方【作成手順】

中長期計画は、様式を前にして考え始めるとまず止まります。先にやるべきことは、文章を書くことではなく、対象拠点・対象輸送・現状値・課題・目標・実施措置を順番に整理することです。実務では、次の6段階で進めると作成しやすくなります。

(1)STEP1 対象拠点と輸送類型を整理する

最初にやるべきことは、全社の物流をいきなりまとめようとせず、どの拠点の、どの輸送を計画の対象にするかを整理することです。ここが曖昧だと、その後のデータ収集も課題整理も全部崩れます。

実務では、まず拠点×輸送類型の一覧表を作ります。縦軸に拠点名、横軸に輸送類型を置けば十分です。輸送類型は、少なくとも次の4つに分けてください。

  • 工場・倉庫からの出荷
  • サプライヤー等からの入荷
  • 自社拠点間の横持ち輸送
  • 店舗・現場・納品先への配送

この表を作ると、どの輸送が第一種荷主としての輸送で、どの輸送が第二種荷主としての受入れなのかが見えてきます。また、貨物量が多い輸送荷待ちが発生しやすい輸送特定の拠点に集中している輸送も把握しやすくなります。

最初から全拠点を対象にする必要はありません。実務では、貨物量が多い拠点、荷待ち・荷役時間が長い拠点、改善効果が大きい拠点から先に整理する方が現実的です。

(2)STEP2 現状データを収集する

次に、その拠点と輸送類型ごとに現状データを集めます。ここで重要なのは、何となく忙しいとか待ち時間が長い気がするといった感覚で書かないことです。中長期計画は、現状値を前提に目標を置く文書なので、数字がないと計画になりません。

最低限、次の4つを集めます。

まず貨物重量です。出荷だけでなく、入荷や拠点間輸送も含めて年間の重量を把握します。社内の販売管理システムや物流システムに重量データがない場合は、出荷件数・製品重量・車両台数などから概算するしかありません。

次に積載効率です。これは全便で正確に把握できなくても構いません。主要ルートについて、1台当たりの積載率、混載率、空車回送の有無、帰り便の活用状況を確認します。運送会社に依頼する場合は、「主要便ごとの平均積載率」「空車回送便の有無」「帰り便活用の状況」を出してもらうと整理しやすいです。

次に荷待ち時間です。これは受発注システムよりも、現場の受付記録、トラックバース(※〉の予約記録、運送会社の日報、到着・接車・退場時刻の記録の方が役に立つことが多いです。最低でも、「到着時刻」「荷役開始時刻」「荷役終了時刻」「退場時刻」を押さえます。

最後に荷役時間です。積込み、積み降ろし、検品、仕分け、ラベル貼付、附帯作業の時間を区別して把握できるのが理想です。荷役時間は社内システムで把握できていないケースが多く、現場での確認が必要になります。

実務では、社内だけで完結しません。社内だけで完結しない場合は、運送会社・倉庫会社・現場責任者から必要なデータの提供を依頼する必要があります。依頼する項目の整理方法や、現場から有効なデータを引き出す確認方法は、自社の輸送構造によって異なります。

(※)トラックバースとは、トラックドライバーーや倉庫の作業員が積込み・積み降ろしを行うために接車する専用の作業スペースです。倉庫や物流センターの壁面に設けられた乗降口に相当し、バースの数が少ないほど同時に対応できるトラックの台数が限られます。

(3)STEP3 課題を整理する

データが集まったら、次は原因を整理します。ここで重要なのは、課題を単に「荷待ちが長い」「積載率が低い」と書かないことです。それでは現象を書いているだけで、改善措置につながりません。

整理の軸は2つです。発注条件と受入条件です。

発注条件とは、荷主側の発注や出荷のルールに起因する問題です。例えば、小口多頻度出荷、当日発注、厳しい時間指定、曜日や月末への集中、出荷ロットの細分化などです。これらは積載効率の低下や車両手配の非効率を招きます。

受入条件とは、納品先や自社拠点の受入れ体制に起因する問題です。例えば、受付時間の集中、トラックバース不足、荷受人員不足、検品手順の複雑さ、ドライバー任せの積み降ろし、附帯作業の押し付けなどです。これらは荷待ち時間や荷役時間の長時間化を招きます。

課題の整理では、発生している現象に対してそれがどちらの構造に起因するかを区分することが重要です。発注条件に起因するものと、受入条件に起因するものを分けて整理することで、後の実施措置が的外れにならなくなります。具体的な整理方法は自社の拠点構造や取引形態によって設計が異なります。

ここまでやると、後の実施措置が書きやすくなります。

(4)STEP4 数値目標を設定する

課題が整理できたら、改善目標を置きます。ここでありがちな失敗は、改善に努めるとか効率化を図るといった抽象表現で終わることです。これでは計画として弱いです。

数値目標は、現状値・目標値・達成時期の3点セットで置きます。

例えば、「A拠点の平均荷待ち時間90分を、2026年度末までに60分以内とする」という形です。積載効率・荷役時間についても同様に、現状値・目標値・達成時期の3点を拠点・ルートごとに設定します。

目標の設定単位は、実際に改善状況を確認できる粒度で置くことが重要です。目標の粒度をどう設計するかは、自社の物流構造と管理体制によって判断が必要になります。

(5)STEP5 実施措置を設計する

数値目標を置いたら、それを達成するための実施措置に落とします。課題に対応した実施措置を設計します。

ただし、実施措置は単なる思いつきではなく、課題との対応関係が必要です。

書き方としては、

  • 現状・課題
  • 実施措置
  • 目標
  • 実施時期

の順で整理すると崩れません。

実施措置は課題の原因は何かに対して設計します。発注条件が原因なら発注設計の見直しが措置になり、受入条件が原因なら体制や運用の変更が措置になります。原因と対応関係がずれた措置は、数値目標に到達できないまま定期報告を迎えることになります。具体的な措置の選定・優先順位の付け方については、自社の発注構造と取引条件の実態を確認したうえで設計する必要があります。

実務では、ここで全部盛りにしないことです。中長期計画は理想論を書く場ではなく、実施可能な措置を年度ごとに配置する場です。2026年度にやること、2027年度以降に広げることを分けて書く方が現実的です。

(6)STEP6 物流統括管理者レビューを行う

最後に、作成した計画を物流統括管理者の視点で見直します。ここで見るべきなのは、文章のきれいさではなく、計画として通るか、実行できるかです。

確認ポイントは4つです。

第一に、第一種荷主としての取組と第二種荷主としての取組が混ざっていないか。

第二に、現状値と目標値が対応しているか。

第三に、実施措置が原因に対して打ち手になっているか。

第四に、物流部門だけでは実行できない施策について、調達・生産・営業・現場管理部門との調整が織り込まれているかです。

中長期計画は、物流部門だけで完結する文書ではありません。発注条件を見直すなら営業や調達の関与が必要ですし、受入条件を見直すなら現場運営や倉庫管理の協力が必要です。物流統括管理者レビューは、その調整を含めて計画を実行可能なものにする最終工程です。

4.中長期計画のテンプレートと記載項目

(1)中長期計画のテンプレート

中長期計画は様式を埋めるだけでは作成できません。

以下は実際の中長期計画で使える基本テンプレートです。

項目記載内容例
現状A物流センターでは納品便が午前中に集中し、平均荷待ち時間は90分となっている
課題納品時間指定が午前中に偏っており、トラック到着が集中している
実施措置納品時間帯の分散を進めるとともにトラックバース予約システムを導入する
目標平均荷待ち時間を2027年度までに60分以内とする
実施時期2026年度:納品時間帯の分散
2027年度:トラックバース予約システムを導入

中長期計画では、この構造を拠点・輸送類型ごとに整理して記載します。

(2)第一種荷主と第二種荷主の書き分け

中長期計画では、第一種荷主としての輸送と、第二種荷主としての受入れの両方が対象になる場合があります。実務では、この2つを区別せずに書いてしまうケースも多いのですが、改善対象が異なるため書き分けて整理する方が実務に即した計画になります。

第一種荷主の場合、主な対象は出荷や配送に関する輸送です。積載効率の改善や輸送回数の見直しなど、輸送の効率化が中心になります。

一方、第二種荷主の場合は、納品や荷受けの体制が対象になります。荷待ち時間や荷役時間の改善など、受入条件の見直しが中心になります。

このように、輸送側の課題なのか、受入れ側の課題なのかを整理して記載することで、中長期計画の内容が実務に即したものになります。

5.中長期計画の記載例(サンプル)

ここでは、中長期計画の代表的な3つの改善テーマについて、実際の記載イメージを示します。実際の計画では、拠点や輸送類型ごとに現状データを整理し、課題と実施措置を具体的に設定することが重要です。

(1)積載効率の記載例

現状主要ルートの平均積載率は30%程度であり、空車回送が発生している。
課題出荷ロットが小さく配送便が分散しているため、1台当たりの積載率が低下している。
実施措置・出荷ロットの見直し
・配送便の集約
・同業他社との共同配送の検討
目標主要3ルートの平均積載率を
2026年度:35%
2027年度:40%
2028年度:45%
へ段階的に引き上げる。
実施時期2026年度:出荷ロットの見直し
2027年度:配送便の統合
2028年度:共同配送導入検討

(2)荷待ち時間の記載例

現状A物流センターでは午前中に納品便が集中し、平均荷待ち時間が90分となっている。
課題納品時間指定が午前に偏り、トラック到着が集中している。
実施措置・納品時間帯の分散
・トラックバース予約システムの導入
・事前到着情報の共有
目標平均荷待ち時間を
2026年度:80分
2027年度:60分
へ短縮する。
実施時期2026年度:納品時間分散開始
2027年度:トラックバース予約システムの導入

(3)荷役等時間の記載例

現状ドライバーによる積み降ろし作業が多く、平均荷役時間は70分となっている。
課題荷役人員不足によりドライバー荷役が常態化している。
実施措置・荷役作業を荷受側へ移管
・パレット輸送の拡大
・検品工程の簡素化
目標平均荷役時間を
2026年度:60分
2027年度:50分
2028年度:40分
へ段階的に短縮する。
実施時期2026年度:1拠点で荷役分担見直し
2027年度:全拠点へ展開
2028年度:パレット化拡大

(4)経済産業省の記載見本集の読み方

経済産業省が公表している記載見本集は、制度理解のための例示です。そのまま写すのではなく、自社の物流実態に置き換えて整理することが重要です。

6.積載効率・荷待ち時間・荷役時間の改善策【テーマ別】

中長期計画では、物流効率化の取組として積載効率荷待ち時間荷役時間の3つのテーマについて改善策を検討します。ここでは、実務で検討される代表的な改善策をテーマ別に整理します。

(1)積載効率の改善方法|荷主ができる具体策

積載効率が低い原因の多くは、運送会社の配車の問題ではなく、荷主側の発注構造にあります。小口・多頻度・時間指定という発注パターンが続く限り、輸送の最適化だけでは積載率は大きく改善しません。

代表的な改善策は次の3つです。

出荷ロットの見直し

出荷単位や納品頻度、リードタイムを見直すことで、1便あたりの積載量を増やします。発注最小単位の引き上げなど、発注ルール自体の見直しも有効です。

パレット化・荷姿の標準化

パレット単位で貨物を管理することで荷台スペースのロスを減らし、積載効率を高めることができます。製品サイズをパレット規格に合わせる設計変更まで踏み込めると、改善効果はさらに大きくなります。

共同配送・帰り便の活用

配送量が少ない地域では、同業他社との共同配送や帰り便の活用を検討します。業界団体や物流マッチングサービスを活用することで、空車回送の削減につながる場合があります。

(2)荷待ち時間の短縮方法|トラックバース予約から発注見直しまで

荷待ち時間の長期化は、トラックバース不足だけが原因とは限りません。納品時間の集中や厳しい時間指定など、荷主側の発注条件が根本原因になっているケースも多く見られます。そのため、設備投資の前に発注条件を見直すことが重要になります。

代表的な改善策は次のとおりです。

トラックバース予約システムの導入

トラックの到着時間を事前予約することで、到着集中を防ぎます。ただし、時間指定が厳しいままでは予約枠が特定時間帯に集中するため、発注条件の見直しとセットで検討する必要があります。

納品時間帯の分散

納品便が午前中に集中している場合、午後や夕方への分散を納品先と協議します。納品条件の見直しには、取引先との合意形成が必要になります。

事前情報共有の仕組み化

出荷予定や積載内容、到着予定時刻を事前に共有することで、荷受け準備を前倒しできます。到着後の確認作業が減るため、接車から荷役開始までの時間短縮につながります。

(3)荷役時間の短縮方法|ドライバー荷役の見直しと作業効率化

荷役時間の長期化で最も改善効果が大きいのは、ドライバーが担っている荷役作業や附帯作業を整理することです。これは物流効率化の観点だけでなく、取適法(旧下請法)や物流特殊指定における附帯作業の問題とも関係する重要なテーマです。

代表的な改善策は次のとおりです。

ドライバー荷役の廃止・自社負担化

積み下ろしや仕分け、ラベル貼付などをドライバーに依頼している場合、荷受け側が担当する体制に見直します。これにより、積み降ろし後すぐに出発できるため、荷役時間を大きく短縮できます。

パレット化による手作業の削減

フォークリフト作業が可能な荷姿に統一することで、手積み・手降ろし作業を減らすことができます。パレット化を拠点間の輸送全体に展開できると、改善効果はさらに大きくなります。

検品工程の簡素化

検品手順が複雑な場合は、現物照合の工程や書類処理の見直しによって作業時間を短縮できます。ただし、検品工程の簡素化は取引先との合意が前提になるため、納品条件の見直しとあわせて検討する必要があります。

7.荷主の発注構造が物流効率化を阻む理由|積載効率・荷待ち・荷役時間が改善しない本当の原因

物流効率化の取り組みとして、トラックバース予約、パレット化、共同配送などの施策が導入されるケースは増えています。しかし、それでも積載効率や荷待ち時間が十分に改善しない現場は少なくありません。

その理由は、輸送の運用ではなく荷主側の発注条件・納品条件そのものに原因がある場合が多いためです。物流現場で起きている問題の多くは、実際には輸送会社の配車や作業の問題ではなく、荷主の業務設計によって生じています。

中長期計画を作成する際には、物流会社に改善策を求めるだけでは不十分です。まず、自社の発注構造が物流効率化を阻害していないかを確認する必要があります。

ここでは、物流現場で頻繁に見られる代表的な発注構造の問題を整理します。

(1)小口多頻度発注が積載効率を下げる理由

積載効率が低い原因として最も多いのが、小口多頻度の発注です。

販売部門や調達部門の都合で納品頻度が細かく設定されると、1回あたりの輸送量が少なくなり、トラックの積載率が下がります。

例えば、同じ月間輸送量でも週1回納品であれば1台のトラックでまとめて輸送できる場合があります。しかし、これを毎日納品に変更すると1便あたりの貨物量が大幅に減り、結果として複数便の輸送が必要になります。この状態では、運送会社がどれだけ配車を工夫しても積載率を大きく改善することはできません。

そのため、積載効率の改善を計画に盛り込む場合には、輸送方法だけでなく出荷ロット・納品頻度・リードタイムといった発注設計の見直しが必要になります。

(2)納品時間指定が荷待ち時間を生む理由

荷待ち時間の長期化は、必ずしもトラックバース不足が原因とは限りません。

多くの物流拠点では、納品時間指定曜日集中などの発注条件が、トラックの到着集中を引き起こしています。

例えば、午前中の納品指定が多い場合、複数のトラックが同じ時間帯に到着し、トラックバースが空くまで待機することになります。このような状況では、トラックバースを増設しても待機列が完全になくなるわけではありません。トラックバース予約システムを導入しても、予約枠が午前中に集中するだけというケースもあります。

荷待ち時間の削減には、設備やシステムの導入だけでなく、納品時間帯の分散時間指定の緩和といった納品条件の見直しが重要になります。

(3)ドライバー附帯作業が荷役時間を増やす理由

荷役時間が長くなる現場では、積み降ろし以外の作業をドライバーが担っているケースが少なくありません。

具体的には、仕分け、検品、ラベル貼付、棚入れなどの作業です。

これらは本来輸送業務とは別の作業であり、ドライバーが担当することで荷役時間が長くなるだけでなく、運行時間の圧迫にもつながります。また、こうした附帯作業の扱いは、取適法(旧下請法)や物流特殊指定における取引適正化の観点からも整理が求められています。

中長期計画に荷役時間の改善を書く場合は、単に作業効率化を検討するだけでは不十分です。附帯作業の分担を契約上どう整理するのかという視点まで踏み込む必要があります。

(4)なぜ物流会社任せでは中長期計画が書けないのか

発注ロット、納品頻度、時間指定、附帯作業の分担。

これらはすべて荷主の業務設計に関わる事項です。

物流会社が提案できるのは輸送の最適化までであり、発注条件そのものを変更することはできません。荷主側の業務設計が変わらない限り、物流効率化の効果は限定的になります。

そのため、中長期計画を実効性のある内容にするためには、物流部門だけでなく営業、調達、生産など複数部門を巻き込んだ発注構造の見直しが不可欠です。物流効率化とは、輸送の改善だけではなく、荷主企業の発注設計そのものを再設計する取り組みでもあります。

8.物流効率化法対応で見落とされがちな法務リスク

物流効率化法への対応は単なる物流改善ではありません。

中長期計画は行政に提出する公式文書であり、物流取引の実態を示す文書でもあります。計画の設計を誤ると、物流改善と同時に取引条件の法務リスクも発生する可能性があります。単なる改善計画ではなく、物流取引のあり方を示す法務文書として作成する必要があります。

(1)中長期計画は行政提出の法務文書

中長期計画は社内資料ではなく、行政に提出する公式文書です。

提出した計画に基づく取組が不十分と判断された場合、国は助言・指導から始まり、勧告や社名公表などの行政措置を行うことができます。

(2)取適法(旧下請法)との関係

物流取引の多くは、取適法(旧下請法)の適用対象になります。

荷主が運送会社に業務を委託する場合、委託料の設定や附帯作業の扱いが問題になることがあります。

例えば、荷役時間の短縮を目的として作業分担を変更する場合、その変更が発注者側の一方的な条件変更に該当すれば、取適法上(旧下請法上)の問題になる可能性があります。

中長期計画に基づく改善を実行する際には、取引条件の変更手続きが適正かどうかを確認することが重要になります。

(3)物流特殊指定との関係

独占禁止法の物流特殊指定は、荷主が優越的な立場を利用して運送会社に不当な条件を課すことを禁止しています。

荷待ち時間の発生、無償の附帯作業、合理的理由のない運賃据え置きなどは、従来から物流特殊指定の問題として指摘されてきました。

物流効率化法が求めている改善テーマで、取適法(旧下請法)が適用されない倉庫における保管や荷役などは、物流特殊指定で行政処分をうけるため法律の名称がかわるだけで遵守する内容は同じです。中長期計画で改善を進めることは、同時に物流取引の適正化にもつながります。

(4)改善がそのまま違反になるケース

物流効率化の取り組みは、その進め方を誤ると別の法令違反を生む可能性があります。

例えば、積載効率を高めるために運送会社へ一方的な条件変更を求めた場合、それが取適法上(旧下請法上)の不当な取引条件変更と評価されることがあります。附帯作業の整理を名目に運送料を引き下げれば、これも取適法(旧下請法)の問題になります。
物流効率化法の改善と、取適法(旧下請法)や物流特殊指定の遵守は同時に設計する必要があります。中長期計画は物流改善の文書であると同時に、物流取引の法的整合性を確認する設計書でもあります。

9.物流統括管理者の選任と役割|誰を選ぶべきか

物流効率化法では、一定規模以上の荷主企業に対して物流統括管理者の選任が求められています。これは単なる担当者ではなく、企業の物流効率化を統括する責任者です。物流効率化法が求めているのは、発注構造や取引条件を含めた物流全体を経営レベルで見直す体制を整備することです。

中長期計画を実効性のあるものにするためには、形式的に担当者を任命するのではなく、企業全体の業務設計に関与できる立場の人材を物流統括管理者として配置する必要があります。

(1)物流統括管理者とは何者か

物流統括管理者は、企業の物流効率化を統括する責任者です。

物流部門の担当者を形式的に任命すれば足りるわけではありません。

物流効率化法が想定しているのは、積載効率、荷待ち時間、荷役時間などの物流指標を把握し、中長期計画に基づいて改善を推進する役割です。さらに、物流会社との取引条件、附帯作業の整理、発注構造の見直しなど、物流取引全体に関与する権限を持つ立場が求められます。

そのため法律では、物流統括管理者は役員その他の経営幹部から選任することが想定されています。物流問題が単なる輸送管理ではなく、企業の業務構造全体に関わる問題だからです。

(2)CLOと物流統括管理者の違い

世間ではCLO(Chief Logistics Officer)という言葉がありますが、法律上の「物流統括管理者」とは異なる概念です。

CLO(Chief Logistics Officer)

経営戦略と連動したロジスティクス戦略を立案し、サプライチェーン全体の最適化を統括する責任者を指します。法律上の役職ではなく、企業が自主的に設ける経営幹部ポジションです。

物流統括管理者

物流効率化法によって特定荷主企業に選任が義務付けられる法定の役職です。物流効率化の中長期計画を作成し、国に提出する義務を負います。

両者は役割の方向性が重なる部分もありますが、CLOがサプライチェーン全体の戦略職であるのに対し、物流統括管理者は法律上の義務履行責任者という位置付けです。物流効率化法への対応においては、後者の要件を満たすことが法的義務になります。

(3)物流統括管理者を選任するだけでは不十分な理由

物流問題の多くは物流部門の外にあります。

物流効率化の課題は物流部門の外にある場合がほとんどです。積載効率・荷待ち・附帯作業のいずれも、他部門の業務設計や取引条件と連動しています。物流統括管理者の本来の役割は、この部門横断の調整を機能させることです。

物流効率化の課題は物流部門だけで完結するものではありません。

企業の業務設計や取引条件と関係する場合も多く、複数部門の関与が必要になるケースがあります。

物流統括管理者の役割は、こうした部門横断の調整を機能させることにあります。

(4)物流ガバナンスとして設計する

物流統括管理者の設置を単なる制度対応として処理すると、制度は形骸化します。

物流効率化法が経営幹部からの選任を想定している理由は、物流問題が企業の業務構造全体に関係しているためです。物流統括管理者が機能するためには、選任するだけではなく、物流に関する意思決定権限、部門間調整権限、計画の承認プロセスを組織として設計する必要があります。
中長期計画を実行可能な文書にできるかどうかは、物流統括管理者にどの程度の権限と体制を与えるかによって決まります。物流効率化法への対応は単なる物流改善ではなく、企業の物流ガバナンスを構築する取り組みでもあります。

10.よくある質問

物流効率化法の中長期計画について、実務担当者から多く寄せられる質問を整理します。

Q1提出期限はいつですか

A1物流効率化法の中長期計画の提出期限は、2026年度は10月末、2027年度以降は毎年7月末です。

2026年度は制度開始初年度のため経過措置として提出期限が10月末に設定されています。実務では、現状データの収集・社内調整・物流統括管理者のレビューに相応の時間がかかります。提出期限の3〜4か月前には作業を開始することが現実的です。

Q2中長期計画を提出しないとどうなりますか

A2物流効率化法では、特定荷主が中長期計画を提出しない場合、行政指導や行政処分の対象になります。

まず、所管大臣(国土交通大臣・経済産業大臣など)から助言・指導が行われます。それでも対応が行われない場合は、勧告が出され、企業名が公表される可能性があります。さらに、勧告に従わない場合には命令が発出されることがあります。

この命令に違反した場合は、100万円以下の罰金が科される可能性があります。

実務上は、いきなり罰則が適用されるわけではなく、まずは行政からの指導が行われるケースが一般的です。しかし、中長期計画は法律で提出が求められている公式文書であり、提出しない状態が続くと企業のコンプライアンス上のリスクになります。行政処分だけでなく、制度対応状況は企業のコンプライアンス姿勢として対外的に示される状態になります。

Q3毎年提出する必要がありますか

A3中長期計画と定期報告は別制度です。

整理すると次のとおりです。

中長期計画原則として5年に1回の提出です。ただし計画内容を変更する場合は再提出が必要になります。
定期報告中長期計画の取組状況について毎年報告する義務があります。

つまり計画を提出して終わりではなく、改善状況を継続的に報告する仕組みになっています。

Q4第一種荷主と第二種荷主の両方に該当する場合はどうなりますか

A4両方に該当する場合は、それぞれの区分に対応した計画を整理する必要があります。

第一種荷主自社が運送契約を結んだ輸送について、積載効率・荷待ち時間・荷役時間の改善を記載します。
第二種荷主運送契約を結ばないトラックの入荷・納品について、受入条件や納品時間指定などの改善を記載します。

製造業や卸売業では、出荷(第一種)と入荷(第二種)の両方が年間9万トンを超えるケースもあるため、自社の輸送構造を整理して該当区分を判断することが重要です。

Q5テンプレートはありますか

A5経済産業省が中長期計画の記載事例集を公表しています。

事例集では、製造業・卸売業・小売業・連鎖化事業者、の4業種について、取組が進んでいる企業、これから取組を深める企業の2パターンの記載例が示されています。

ただしこれは参考資料であり、そのまま使えるテンプレートではありません。

実際の計画では、自社の物流実態・発注構造・現状データを基に内容を作成する必要があります。

Q63PL会社任せでも荷主が作成する必要がありますか

A6はい。中長期計画の作成義務は荷主企業にあります。

物流業務を3PL会社に委託している場合でも、物流効率化法が求めているのは

  • 発注ロット
  • 納品条件
  • 附帯作業
  • 荷待ち・荷役構造

といった荷主側の発注構造の見直しです。

そのため、3PLから輸送データや現場情報の提供を受けることは有効ですが、計画の内容と実施責任は荷主企業が負うことになります。

11.まとめ|中長期計画は発注構造と物流法務の設計書である

(1)中長期計画は「提出書類」ではない

中長期計画は行政に提出する公式文書ですが、本質は発注構造の見直しです。

テンプレートを埋めて提出することが目的ではありません。積載効率が低い原因、荷待ち時間が長い原因、荷役時間が増える原因、これらの多くは、荷主の発注条件や納品設計に起因しています。

その構造を変えないまま数値目標だけを書いた計画は、定期報告の段階で計画倒れになります。

中長期計画を実効性のある文書にするためには、現状データの把握・発注条件の見直し・部門横断の体制整備まで含めて設計する必要があります。

(2)発注構造と物流法務を同時に設計する

物流効率化法への対応で最も見落とされているのは、改善策の設計と法務リスクの整理を同時に行う必要があるという点です。

荷待ち時間の削減、附帯作業の整理、納品条件の見直しといった改善策は、取適法(旧下請法)や物流特殊指定と密接に関係しています。改善の進め方を誤れば、物流効率化法への対応がそのまま取適法(旧下請法)違反を生む可能性があります。

中長期計画は物流改善の計画書であると同時に、物流取引の法的整合性を確認する設計書でもあります。

(3)中長期計画の作成で迷った場合

中長期計画の作成では、自社が特定荷主に該当するか、第一種・第二種の区分、発注条件のどこを見直すべきか、取適法(旧下請法)や物流特殊指定との関係、といった点で判断に迷うケースが少なくありません。

制度対応を単なる書類作成で終わらせるのではなく、物流構造と取引条件を整理したうえで計画を設計することが重要です。

物流効率化法・取適法(旧下請法)・物流取引の実務に関するご相談については、物流制度と実務の両面から整理する診断・相談にも対応しています。

物流効率化法は、物流改善の法律ではない。物流取引のガバナンスを設計する制度である。

12.物流効率化法への対応を進める荷主企業へ

制度改正により、物流取引における荷主企業の責任範囲は大きく変化しています。契約書の整備だけでなく、発注条件や現場の運用実態まで含めて整理しておくことが重要です。

中長期計画の作成は、物流効率化法だけでなく、取適法(旧下請法)・物流特殊指定との整合性を同時に確認する必要があります。

行政書士法人運輸交通法務センターでは、当法人が独自に開発した50項目のチェックリストに基づき、現在の制度対応リスクを整理する診断を実施しています。発注条件、契約内容、運用実態を横断的に確認し、制度改正後の是正勧告リスクの有無を客観的に可視化します。

自社の対応状況を整理したい場合は、下記物流下請法リスク診断を参照ください。

13.監修者紹介・法人紹介

監修者:行政書士 楠本 浩一(くすもと こういち)
行政書士法人 運輸交通法務センター 代表社員/
著書『荷主と物流会社のための物流下請法と「法令違反」防止ガイド

行政書士 楠本浩一は、物流分野における取適法(旧下請法)の実務に取り組む物流法務の実務家です。著書『荷主と物流会社のための物流下請法と「法令違反」防止ガイド』を出版し、物流分野における法令遵守とガバナンス設計を体系化してきました。

パナソニックの物流部門において物流法務を専任で担当。その後、物流子会社へ出向し、同社においても物流法務の責任者を務めました。荷主側と物流会社側の双方で法務責任を担い、契約設計、委託構造、運用統制までを含む実務を20年以上にわたり経験してきました。

主な実務領域

🟦物流発注契約の設計 ・委託スキームの構築 ・元請・実運送会社との法的整理
🟦契約と現場実態の乖離是正 ・取適法(旧下請法)および物流特殊指定対応


これまでに全国100か所以上の物流拠点に入り、倉庫・輸送・積込・待機・附帯作業の実態を確認。条文と現場の間にある構造的なズレを修正する実務を積み重ねてきました。

物流トラブルの多くは運送会社側ではなく、荷主側の発注設計とガバナンス構造に起因している。制度は守るものではなく、設計するもの、この視点から物流・運送業専門の行政書士へ転身し活動しています。

講師・掲載実績

 東海電子主催セミナー講師SMBCコンサルティング【NETPRESS】、日本実業出版社【企業実務】業界誌『新物流時代』(トラック情報社)NIKKEI COMPASS

行政書士法人 運輸交通法務センター

行政書士法人 運輸交通法務センターは、その名称の通り、運送・物流分野に特化した専門家集団です。

行政書士の独占業務である許認可手続にとどまらず、行政書士の「外側」にある非独占領域、すなわち荷主企業向けの物流ガバナンス構築に重点を置いています。

専門領域
  • 荷主側の物流発注設計 ・契約と現場運用の整合
  • 待機時間・附帯作業を含めた実務構造の見直し
  • 「物流下請法」を軸としたガバナンス設計

製造業・流通業・小売業といった荷主企業に対し、問題が起きてから対処する事後対応型ではなく、問題が起きない構造を先につくる事前設計型(予防型)の物流法務を提供している点が最大の特徴です。

各行政書士には専属の一般職員が付き、書類作成・情報整理・進行管理を分担。特定の担当者に依存せず継続的に案件を進められる体制を整えています。

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当法人が提供する1年限定のオーダーメイド型サービスです。
独自の50項目診断で現状を徹底分析し、契約書修正案・委託チェックリスト・社内研修などの成果物を伴う改善プログラムで、違反リスクをゼロへ近づけます。

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