【物流Weeklyに掲載】物流特殊指定 改正案の課題指摘「着荷主規制」も

物流Weekly 2026年(令和8年)5月21日(木曜日)

公正取引委員会が進める物流特殊指定(特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法)の改正案(令和9年4月1日施行予定)では、これまで規制の外に置かれてきた「着荷主」が、新たに荷主規制対象に加わる方針が示された。公取委では、同改正案について4月13日までパブリックコメントを募集していたが、物流業務を専門とする行政書士法人運輸交通法務センター(大阪市北区)の楠本浩一代表社員は、パブコメを提出して改正案の構造的課題を指摘した。
現行の物流特殊指定は、物流会社に対して直接の取引関係を持つ「発荷主」が主な規制対象とされてきた。今回の改正案では、荷物の届け先である「着荷主」にも違反主体としての責任が及ぶ方向で検討が進んでいる。
楠本氏は「改正は、『運送会社の問題』から『荷主企業の責任』へと規制の重心が移る転換点となる」と説明し、「改正後は、これまで問題とされてこなかった発注慣行が、行政指導や是正の対象となる可能性がある。特に、従来の慣行を前提とした発注・運用を継続している場合、想定外の指摘を受けるかもしれない」と警鐘を鳴らす。
同氏は、着荷主による長時間の荷待ち指示、検品作業の押し付け、附帯業務の無償提供などは現場で日常的に行われてきたとし、「今回の改正は、この『規制の空白地帯』を初めて正面から埋めに行く動きだと言える。これらの行為は、従来は『現場運用の範囲』として処理されてきたが、今後は法令違反と捉えられるかもしれない」と続ける。

「直接指示」の除外

その改正案に構造的問題があるとして、同氏が提出したパブコメの骨子は大きく2点。まず、改正案最大の抜け穴として「『直接指示』の除外」を挙げる。「改正案では、着荷主の行為が規制対象となるのは『発荷主を経由して運送事業者に行為をさせる場合に限る』とされている。しかし実際の物流現場では、着荷主の担当者や委託先の倉庫会社が、発荷主や元請けを介さず運送事業者やドライバーに直接指示するケースが大半」だとし、「この直接指示こそ現場の負荷の本丸であるにもかかわらず、規制の対象外となる可能性があり、実務とのかい離が生じる懸念がある」と指摘。
そしてもう1点は、「報復措置と執行の仕組みの欠陥」。改正案の通報制度は、発荷主が公取委へ通報する構造になっているが、「発荷主にとって着荷主は『お客さん』であり、通報は取引関係の破壊を意味する。その結果、通報は合理的選択にならず、違反は放置されてしまう。さらに、着荷主の要求は、口頭で行われることが大半で、立証が極めて困難でもある」とし、「運送事業者やドライバーからの匿名申告の仕組み、着荷主側への指示記録の保存義務など、執行の仕組みが整備されなければ機能しない」と言い切る。
「下請法が取適法となり、そこで漏れていたのが着荷主の責任であり、それを補うのが改正物流特殊指定である。このように少しずつ改善がされてきているが、まだ漏れがある」と語る同氏。制度が「現場に届く形」で設計されることを目的に今回、意見を提出したと意図を説明する。

6月中に公表

今回のパブコメは4月13日で募集が締め切られたが、結果について公取委に聞くと「(5月12日現在)いまは集計中であり、どれだけ提出があったかや内容はお答えできない」(企業取引課)とのことだが、「集まった意見も参考にして、6月中には最終的な改正の内容を公表する予定」としている。(中野秀一)

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