一般貨物自動車運送事業の許可更新制はいつ始まる? 国土交通省資料で示された施行までの流れ【2026年7月時点】

2025年6月の法改正により、一般貨物自動車運送事業の許可は5年ごとの更新制になります。許可を取ればそのまま続けられるのではなく、一定の期間ごとに、引き続き事業を続けられる状態にあるかを確認されることになります。
ただし、2026年から直ちに許可更新申請が始まるわけではありません。申請書の様式、添付書類、審査で何をどこまで確認するのかは、2026年7月時点ではまだ公表されていません。

一方で、「貸切バスの許可更新と同じ大量の書類が必要になる」「全車両について原価計算書を作らなければならない」といった予想も出ています。しかし、国土交通省の資料には、そこまで具体的な内容は示されていません。

2026年7月14日に開かれた第1回物流政策推進関係者会議では、許可更新制の施行から既存運送事業者の許可更新が始まるまでのおおまかな流れが示されました。現時点で決まっていること、まだ決まっていないこと、運送事業者が今から確認しておくべき事項を整理します。

1 一般貨物自動車運送事業の許可更新制はいつ始まるのか

許可更新制を定めた改正法(令和7年法律第60号)は、2025年(令和7年)6月11日に公布されました。改正法は段階的に施行されており、無許可(白ナンバートラック)営業等に対する罰則強化や委託次数制限などは2026年4月から既に施行されています。許可更新、適正原価の遵守義務および運転者の処遇確保に関する規定は、公布から3年以内(2028年6月11日まで)に施行される予定です。
ただし、注意が必要なのは、「ルールの発表」「義務の開始」「実際の許可更新申請」は時期が異なるという点です。国土交通省の資料や実務上の見通しを整理すると、以下の流れになります。

段階時期(目安)内容
① 告示2027年春頃国土交通大臣が「適正原価」の具体的な数値を発表する。
② 施行2028年4月から6月適正原価の遵守義務が始まり、許可更新制が法的に動き出す。
③ 経過措置施行から2年間既存の運送事業者に対し、新しい仕組みへ対応するための猶予期間が置かれる。
④ 許可更新申請開始2030年以降猶予期間終了後、既存の運送事業者の許可更新申請と審査が順次開始される。
⑤ 一巡申請開始から約5年全国約6万社の運送事業者の許可更新手続が順番に行われ、一巡する。

まず、法律の施行に先立って「適正原価」が告示されます。業界内では、周知期間を1年程度確保するために、2027年春頃の適正原価告示、2028年4月から6月の遵守義務施行が予定されています。

この2028年の施行時点で、運送事業者には「適正原価を継続して下回らないようにする義務」が発生します。
しかし、既存の事業者が実際に許可更新の申請を求められるのは、さらに2年間の経過措置(猶予期間)を経た2030年(令和12年)以降となります。

したがって、「2028年にいきなり許可更新申請が始まる」わけではありません。一方で、2030年以降の許可更新審査では、施行時(2028年)からの取引実態が「継続して適正原価を守っていたか」という視点で見られる可能性があります。

現時点では、まだ具体的な申請様式も審査基準も公表されていません。

この段階で、先行する貸切バスの許可更新を参考に過去の運行に遡って資料を作成したり、高額な原価管理システムを「許可更新対策」として導入したりする必要はありません。
まずは今後段階的に公表される政省令や告示、審査基準の内容を確認し、その確定したルールに基づいて準備を進めることが、経営上のリスクを避ける最も合理的な対応です。

※国土交通省資料より

2 法律ですでに決まっていること

現時点で法律上明らかになっている主な内容は、次の三点です。

項目決まっている内容
許可の更新一般貨物自動車運送事業の許可を5年ごとに更新する
適正原価運賃・料金が継続して適正原価を下回らないようにする
運転者の処遇適切な賃金など、運転者の処遇を確保する

このうち、許可更新の可否に大きく関わるのが適正原価です。運送事業者が自ら貨物を運ぶ場合だけでなく、元請として別の運送事業者へ委託する場合も、運賃・料金が継続して適正原価を下回らないようにすることが求められます。

さらに、適正原価を下回る運賃・料金を継続的に収受している場合には、許可の更新が認められないとされています。
重要なのは、「一件でも原価を下回れば直ちに許可更新できない」という内容ではないことです。国土交通省の資料は「継続して」「継続的に」という言葉を使っています。

ただし、何か月続けば継続と判断されるのか、全取引のうちどの程度が原価を下回れば問題になるのかは、まだ示されていません。荷主別、車両別、運行別、会社全体のどこで確認するのかも未定です。
したがって、一件だけで不安をあおるのも、赤字の仕事を長期間続けても問題ないと考えるのも適切ではありません。今後は、自社がどの仕事で必要な費用を回収できているのかを説明できることが、これまで以上に重要になります。

3 許可更新審査の方法と添付書類はまだ決まっていない

許可更新申請については、次の内容が未公表です。

未公表の事項現在の状況
申請書・添付書類様式、提出資料とも未定
決算書提出の要否、確認方法とも未定
巡回指導・行政処分許可更新での扱いは未定
適正原価原価割れを確認する資料や期間は未定
原価計算車両別、荷主別、運行別に求めるかは未定
点呼・労務資料提出範囲は未定

貸切バスの許可更新申請と同じ書類が必要になることも、全車両について原価計算書を提出することも、紙による点呼記録が認められなくなることも、2026年7月時点で国土交通省は公表していません。
もちろん、今後の検討の結果として、そのような仕組みが採用される可能性を否定するものではありません。しかし、現時点では、どれも国土交通省が決定した内容ではなく、あくまで将来の予想にすぎません。
そのため、「許可更新制が始まるから」という理由だけで、車両ごとの原価管理システムや点呼システムなどの高額な機器・システムへ投資したり、許可更新申請を想定した資料を先回りして作成したりする必要はありません。

デジタコや自動点呼システム、配車システムなどは、現在の安全管理や業務改善に役立つ場合があります。しかし、それは日々の業務改善のための投資であり、2026年7月時点では、許可更新制への対応として導入が必要と国土交通省が示したものではありません。
まずは今後公表される政令、省令、告示、申請様式、審査基準を確認し、その内容に応じて対応を進めることが重要です。

4 許可更新事務は運輸局だけが行うとは限らない

国は、許可更新事務と運送事業者への適正化支援を効率よく進めるため、独立行政法人に担わせることを含めた体制を整える方針を示しています。
これは、許可更新事務だけでなく、トラック事業の適正化等に資する取組をあわせて進めることを想定したものです。許可更新事務に必要な費用は更新手数料等で確保し、それ以外の適正化に関する取組については、広く社会で支える観点から財源を検討するとされています。なお、現時点では具体的な実施体制や役割分担は示されていません。

このため、貨物の許可更新が貸切バスの許可更新と同じように、運輸局だけで申請受付から審査まで行う形になるとは限りません。ただし、担当する独立行政法人、運輸局との役割分担、申請先、手数料の額はまだ決まっていません。
運送事業者の数が多い貨物事業で、どのように申請を受け付け、何を確認するのかは、今後の重要な検討事項です。

5 標準的運賃は廃止され、適正原価へ移行する

国土交通省の資料には、適正原価の導入に伴い、標準的運賃を廃止することが明記されています。
標準的運賃は、荷主との運賃交渉で使う参考額として示されてきました。標準的運賃を下回る金額で受注しても、それだけで直ちに違反になるものではありませんでした。
これに対し、適正原価は、運賃・料金が継続して下回らないようにすることが法律上求められ、許可の更新にも関係します。単なる名称変更ではありません。

適正原価に何を含め、どのように計算するかは、2026年7月17日に始まった適正原価の設定に向けた有識者検討会で話し合われます。車格、距離、時間、地域だけでなく、実車率、帰り荷、混載、荷待ち、積み込み、荷降ろし、附帯作業などをどう扱うかが重要になります。
具体的な金額や計算方法は、まだ決まっていません。標準的運賃がいつ廃止され、適正原価へ切り替わるのかも、今後の発表を確認する必要があります。

6 運送事業者が今から確認しておくべきこと

許可更新申請書を作る必要はありませんが、現在の許可内容と実際の営業状況は合わせておく必要があります。

確認する事項主な確認内容
営業所・休憩施設・車庫移転、増設、廃止などの認可・届出が済んでいるか
車両増車・減車の届出と実際の車両数が合っているか
運行管理者・整備管理者選任・解任の届出と現在の担当者が合っているか
巡回指導・監査指摘事項が未改善のまま残っていないか
社会保険加入漏れや保険料の未納がないか
運送契約の書面運賃と料金、荷待ち・荷役等の対価を分けているか
労働時間と賃金拘束時間、残業時間、賃金を説明できるか

例えば、車庫を移転したのに認可を受けていない、退職した運行管理者が届出上残っている、処分した車両の減車届が出ていないといった事例があります。これらは許可更新制によって新たに求められたものではなく、現在の法令でも対応が必要です。
特に、一般貨物自動車運送事業者では2025年4月から、運送の内容と対価を書面に記載して交付することが義務となりました。また、貨物利用運送事業者についても、2026年4月から同様の義務が適用されています。運賃だけでなく、荷待ち、積み込み、荷降ろし、附帯作業の対価も区分して記載する必要があります。
適正原価が示された後は、運賃だけでなく、これらの料金を含めて必要な費用を回収できているかが問われます。また、運転者の労働時間に見合う賃金や割増賃金が支払われているかも確認される可能性があります。

今確認すべきなのは、将来の申請書ではなく、現在の届出、帳票、契約書、賃金計算です。

7 今後、いつ新しい情報が出るのか

許可更新制の具体的な進め方は物流政策推進関係者会議で、適正原価の内容は有識者検討会で話し合われます。

時期公表が見込まれる内容
2026年中適正原価に関する有識者検討会の議論と提言
2026年秋から冬頃第2回物流政策推進関係者会議で許可更新事務などの検討状況を報告
2027年春頃第3回会議で適正原価の検討状況を報告・議論
その後物流政策推進会議、運輸審議会を経て適正原価を告示
遅くとも2028年6月まで許可更新制、適正原価に関する規定等を施行

今後、国土交通省の会議資料、政令、省令、告示、審査基準が順次公表されます。申請書や審査方法が何の前触れもなく突然決まるわけではありません。まだ決まっていない内容を予想して動くより、正式な資料を確認してから必要な準備を始めるべきです。

まとめ

一般貨物自動車運送事業の許可更新制の導入は決定しましたが、許可更新申請が直ちに始まるわけではありません。
遅くとも2028年6月までに予定されている施行後にも2年間の経過措置が置かれるため、既存の運送事業者が実際に許可更新申請を求められるのは、早くても2030年(令和12年)以降となります。

その後、おおむね5年をかけて全国の事業者の許可更新が一巡する計画です。

許可更新申請書の様式や添付書類の範囲、決算書や巡回指導の結果を審査でどう扱うかといった詳細は、2026年7月時点ではまだ未定です。
そのため、今から許可更新申請書を予想して作成したり、「許可更新対策」をうたう高額な機器やシステムを急いで導入したりする必要はありません。
一方で、営業所・車庫・車両・管理者の届出内容と実態の一致、巡回指導での指摘事項の改善、社会保険の適正な加入、運送契約の書面交付、そして労働時間と賃金の適切な管理は、現在の法令において既に義務付けられている事項です。

許可更新制への最初の備えは、まだ存在しない申請書を作ることではありません。現在の許可内容と実際の事業運営を一致させ、今守るべき義務を確実に履行することです。

まずはチェックリストで貴社の運行管理体制を確認してください

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