運送会社から「今の運賃では適正原価を確保できません」と言われたとき、荷主は何を確認するのか

2026年8月26日、国土交通省の「第2回 適正原価の設定に向けた有識者検討会」が開催されました。
適正原価については、トラック運送事業者の運賃や経営に関する話として取り上げられることが多くあります。しかし、実際に運賃・料金を支払い、運送を発注するのは荷主です。
今後、運送会社から「現在の運賃では適正原価を確保できない」として運賃改定を求められたとき、荷主は提示された金額を何を基に確認するのか。現在の契約や発注内容をどこまで確認しておくのか。

第2回検討会では、こうした今後の運賃協議にも関係する論点について、運送業界、労働組合、経済団体、農業・出版関係団体から意見が出され、国土交通省からも適正原価に関する個別の検討事項が示されました。

この記事では、国土交通省が公表した一次資料に沿って、第2回で何が議論されたのか、荷主企業に関係する事項は何か、そして現時点でまだ決まっていないことは何かを確認します。
具体的な運賃交渉の方法や個別企業での判断方法については、ここでは扱いません。

1.2026年8月26日、第2回「適正原価の設定に向けた有識者検討会」が開催

国土交通省は2026年8月26日、第2回「適正原価の設定に向けた有識者検討会」を開催しました。
第1回は7月17日に開催され、適正原価を検討するうえでの主な論点が示されています。第2回では、その論点について関係団体から意見を聴くとともに、国土交通省から個別の検討事項が示されました。
今回、有識者検討会でヒアリングが行われたのは、次の6団体です。
①公益社団法人 全日本トラック協会
②全日本運輸産業労働組合連合会
③日本商工会議所
④全国商工会連合会
⑤全国農業協同組合中央会
⑥一般財団法人 出版文化産業振興財団

運送事業者の立場だけでなく、ドライバーの労働環境、中小企業の価格転嫁、農産物輸送、出版物の共同配送など、それぞれ異なる立場から意見が出されています。
また、これとは別に、9月中には貨物運送業、利用運送業、建設業、小売業、食品製造業、卸売業、自動車製造業などへの個別ヒアリングも行われ、第3回検討会でその結果が報告される予定です。
第3回有識者検討会は、2026年10月1日に予定されています。
第2回で適正原価の内容が決まったわけではありません。今回示された内容の中にも、今後さらに検討される事項が数多く残っています。

2.第2回で示された主な論点

第2回検討会では、関係団体からのヒアリングとあわせて、国土交通省から「適正原価の設定に向けた個別論点の検討①」が示されました。

今回取り上げられた主な内容は、次のとおりです。
①適正原価と実際に収受する運賃・料金との関係
②待機時間料、積込料・取卸料、附帯業務料の扱い
③有料道路利用料、利用運送手数料などの扱い
④燃料サーチャージ
⑤実車率と回送にかかる費用
⑥物価上昇を適正原価へ反映する方法
⑦輸送の安全確保に必要となる経費
⑧事業を継続するために必要となる投資
⑨荷主との運賃交渉で参考とするモデル運賃

国土交通省は、適正原価について、トラック運送事業者が事業を行うために一般的に必要となる費用を積み上げて算出するものとしています。実際に荷主から収受する運賃・料金とは分けて考える方向が示されています。
また、待機、積み込み・取卸し、附帯業務については、その作業に伴って発生する人件費などを「料金原価」として扱う案が示されました。有料道路利用料などの実費や燃料サーチャージについては、これとは分けて扱う方向です。
実車率についても検討が行われています。実車率や回送にかかる費用についても、現在の標準的な運賃で採用されている考え方を踏まえ、適正原価でどのように扱うかが検討されています。

さらに、人件費、車両費、タイヤ費などについて、物価指数や賃金に関する統計を使い、一定期間ごとに価格上昇を反映する方法も検討されています。
安全確保に必要となる経費や、人材確保、労働環境改善、コンプライアンス、BCPなど、今後も運送事業を続けるために必要となる費用をどこまで適正原価へ含めるかについても検討が続いています。

これらはいずれも第2回の段階で最終決定されたものではありません。

3.「適正原価」と実際の「運賃・料金」は同じものではない

荷主企業がまず押さえておきたいのは、適正原価が、そのまま荷主へ請求する運賃表になるわけではないという点です。
国土交通省は、適正原価を、トラック運送事業者が事業を行うために必要となる費用として整理しています。一方、実際に荷主から収受する運賃・料金は収入であり、第2回資料では両者を分けて考えています。

また、適正原価には、適正な利潤(事業報酬)は含まれていません。実際に荷主から収受する運賃・料金は、原価に適正な利潤を加えた水準になるとされています。
そのため、荷主との運賃交渉で参考にするものとして、現行の標準的運賃告示に相当する「モデル運賃」を提示する案も示されています。モデル運賃については、車種別・地域別の運賃表とすることなどが想定されていますが、具体的な内容は今後も検討されます。
したがって、今後の荷主との運賃協議では、適正原価と、実際に運送会社から提示される運賃・料金を同じ数字として扱わないことが前提になります。

4.荷主企業では、運送会社からの運賃改定にどう対応するか

適正原価が具体化した後、荷主企業にとって身近になるのが、運送会社との運賃・料金の協議です。
例えば、取引している運送会社から、「現在の運賃では、適正原価を確保できません」として、運賃や料金の見直しを求められる場面が考えられます。
そのとき荷主企業では、提示された金額について何を確認するのか、社内で誰が判断するのか、現在の契約や発注内容をどこまで確認するのかを考えることになります。
現在の運賃・料金の内容や、運送に付随する料金、契約・発注内容なども確認の対象になります。

現時点では、荷主が運送会社からどのような資料の提示を受けて運賃を確認するのかなど、具体的な方法までは決まっていません。
荷主企業では、告示を待ってから対応を始めるのではなく、まず現在の運送委託について、どの運送会社へ、どのような条件で、いくら支払っているのかを確認しておくことが準備の一つになります。

5.運送会社側では、適正原価を下回らない運賃・料金が求められる

適正原価が告示された後、一般貨物自動車運送事業者は、自らが引き受ける貨物の運送に係る運賃・料金が適正原価を下回ることとならないようにしなければなりません。
第2回資料では、その確認方法について、費用の各項目と運賃・料金の各項目を一つずつ対応させるのではなく、適正原価全体と運賃・料金収入全体を比較する考え方が示されています。

また、個別の運送契約ごとに適正原価以上の運賃・料金を求めるのではなく、一定期間における運賃・料金が適正原価を下回らないかを確認する考え方が示されています。
そのため運送会社側では、自社が引き受ける運送について、一定期間の運賃・料金収入と適正原価との関係を確認できるようにしておくことが必要になります。
具体的にどの期間で確認するのかについては、今後も検討されます。

6.第2回の段階で、まだ決まっていないこと

第2回検討会では、適正原価について具体的な論点が示されましたが、最終的な内容が決まったわけではありません。

今後は、例えば次のような事項について検討が続きます。
① 適正原価を設定する事業の区分や車型・車種
② 地域による区分
③ 人件費や燃料費の算定方法
④ 多重取引における扱い
⑤ 適正原価を確認する期間
⑥ モデル運賃の具体的な内容

そのため、現時点で「適正原価はいくらになるのか」「モデル運賃はいくらになるのか」といった具体的な金額を示す段階にはありません。
国土交通省では今後も検討が続くため、確定した内容と検討中の内容を分けて確認する必要があります。

7.次回の第3回有識者検討会は10月1日

国土交通省が第2回検討会で示した予定では、第3回「適正原価の設定に向けた有識者検討会」は2026年10月1日に開催されます。
第3回では、追加の関係団体ヒアリングに加え、9月中に行われる個別ヒアリングの結果が報告される予定です。

また、第2回では結論が出ていない事業区分、車型・車種、地域、人件費、燃料費、多重取引、適正原価を確認する期間などについても、引き続き検討が進む予定です。
適正原価については、今後も国土交通省から順次資料が公表されます。

荷主企業には、適正原価の告示を待つだけでなく、今のうちに現在の運送委託、運賃・料金、待機や積み込み・取卸しの扱い、契約内容を一度確認しておくことをお勧めします。

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