物流効率化法に基づく「特定事業者」の指定結果が公表され、荷主にとって見逃せない数字が並びました。
国土交通省が公表した2026年7月29日時点の指定状況では、特定第一種荷主が1,701者、特定第二種荷主が1,366者です。その差は335者にのぼります。特定連鎖化事業者はわずか15者でした。この数字については、私が取材協力した物流ニッポン(2026年8月14日付)でも取り上げられています。
第一種荷主1,701者、第二種荷主1,366者――なぜ335者も差があるのか
第一種荷主は主に発荷主、第二種荷主は主に着荷主です。届出の要否は、事業者全体の重量ではなく、第一種・第二種それぞれの立場ごとの取扱貨物重量が前年度に9万トン以上あるかで判定します。同じ9万トンという基準でありながら、発荷主側と着荷主側でこれだけ数が開きました。
差を生む一つの要因は、法令の数え方そのものにあります。第二種荷主の重量は、着荷主が受け取る貨物をすべて数えるわけではありません。他社が運送契約を結んでいる貨物であっても、着荷主が受渡しの日・時刻・時間帯を運転者に指示できない貨物は、第二種の重量から除かれます。自社が運送会社へ委託している貨物も、それは第一種の立場として数えるため、第二種には入りません。
つまり、発荷主が納品の日時を決めて送り込んでくるだけの着荷主は、受け取っている実際の貨物量が多くても、その多くが第二種の数える対象から外れます。実重量が同じでも、着荷主のほうが9万トンに届きにくい。この数え方の違いが、第一種と第二種の指定数に差が生じた大きな要因の一つと考えられます。
もう一つの要因として、着荷主側は数字を把握しにくいという事情もあります。自社から出す貨物は物流部門が重量をまとめて管理している会社が多い一方、入ってくる貨物は原材料・部品・商品を調達部門や工場、事業所がそれぞれ発注していて、会社全体で年間何トン受け取っているのかを把握できていない会社も少なくありません。ただしこれは補足的な理由で、先に述べた数え方の違いのほうが効いています。
いずれにせよ、「第一種で9万トンを超えているから第二種でも同じ重量になる」とは限りません。発荷主と着荷主では、対象となる貨物を別々に確認する必要があります。
連鎖化事業者はわずか15者、外食チェーンは見当たらない

次に注目したいのが特定連鎖化事業者です。7月29日時点で指定されたのは15者だけで、セブン-イレブン・ジャパン、ローソン、ファミリーマート、ミニストップなど大手コンビニ本部が含まれる一方、外食チェーンは指定一覧に見当たりません。
ここで注意したいのは、店舗数が多いフランチャイズチェーンだから当然に連鎖化事業者になるわけではないことです。国土交通省は、フランチャイズ本部が加盟店と運送事業者との貨物の受渡しについて運送事業者に指示できる場合に、連鎖化事業者に該当すると説明しています。
重要なのはチェーン全体の売上高や店舗数ではなく、本部が加盟店への配送にどこまで関与し、荷物の受渡しを実際に握っているかです。
連鎖化事業者15者のうち11者は荷主としても指定

もう一つ、今回の一覧には見落とせない点があります。連鎖化事業者15者のうち11者は、第一種または第二種の荷主一覧にも同じ社名で載っています。同じ会社が、荷主としての顔と、連鎖化事業者としての顔の両方で指定されているのです。会社そのものが対象になるかどうかではなく、その会社が貨物にどう関わるかという立場ごとに指定される。今回の一覧は、そのことをはっきり示しています。
9万トンだけを見ても届出の要否は判断できない
今回の指定事業者一覧は、単なる企業名簿ではありません。第一種と第二種の差、連鎖化事業者が15者にとどまったこと、そして同じ会社が複数の立場で名を連ねること。いずれも、対象になるかどうかは、9万トンを超える会社かどうかだけではなく、誰が運送契約を結び、誰が受渡しの時刻を運転者に指示できるのかで決まることを示しています。
自社が第一種なのか第二種なのか、どの貨物が9万トンに算入されるのか。これを正しく判定するには、発注と委託の実態を運送契約の単位までさかのぼって確認する必要があります。ここが曖昧なまま届出の要否を判断している荷主は、少なくありません。
同志社大学卒業後、パナソニックの物流部門および物流子会社にて物流法務と契約管理に携わり、物流業界での経験は30年以上。荷主企業と物流会社の双方の実務を通じ、物流部門単独では解決できない課題の所在を把握。
独立後は「荷主責任」を切り口としたコンプライアンス実務の専門家として、社内ルールの制定や委託仕様書の作成、社内研修を通じ、荷主企業のリスク低減を支援。







