公正取引委員会・中小企業庁・国土交通省が連携強化 10月・11月に全国で合同荷主パトロール

物流取引の監視が全国規模で強化へ。荷主企業は運送契約・運賃料金・荷待ち・荷役の取扱いを再確認

2026年9月28日、公正取引委員会は、国土交通省、中小企業庁の3機関による「物流分野取引適正化地方ブロック連絡会議」を全国の地域ブロックに設置すると発表しました。10月から11月までの2か月間を集中監視月間とし、全国で合同荷主パトロールなどを実施します。
2026年1月には取適法が施行され、特定運送委託が規制対象に加わりました。7月には運送会社に荷役作業などを無償で行わせた荷主企業に勧告が行われ、2027年4月には改正物流特殊指定も施行されます。
物流取引の監視は、荷待ち時間や運送契約の問題から、荷主企業の発注・料金・支払条件へと広がっています。

目次

1.3機関が連携し、物流取引の監視を強化

これまで公正取引委員会と国土交通省は、トラック・物流Gメンの集中監視月間において合同荷主パトロールなどを実施してきました。今回、その連携に中小企業庁が加わります。
新設される地方ブロック連絡会議では、公正取引委員会地方事務所等、地方経済産業局等、地方運輸局等が取引に関する情報を共有し、調査方法や対応方針を協議します。地方で生じた課題については本局・本省が調整し、全国の行政機関へ情報を還元します。
2026年1月施行の取適法では、事業所管省庁も委託事業者に対する指導・助言を行えるようになりました。国土交通省が把握した物流取引上の問題について、公正取引委員会や中小企業庁との連携が進むことになります。
荷主企業は、貨物自動車運送事業法への対応と取適法への対応を、別々の担当部門に任せたままでよいのか、取引全体を確認する必要があります。

2.福岡・新潟・高松・東京で合同パトロール出発式

各地方の公正取引委員会事務所等からも、出発式の日程が公表されています。

国土交通省は、全トラック事業者及び倉庫業者への実態調査や関係省庁からの情報を活用し、荷主・元請事業者への監視と是正指導を強化する方針です。

3.監視対象は荷待ち時間だけではない

国土交通省が公表した監視対象には、長時間の荷待ち、契約にない附帯業務、運賃・料金の不当な据置き、過積載運送の指示・容認などが含まれています。
取適法に関しては、支払遅延、代金の減額、買いたたき、協議に応じない一方的な価格決定などが挙げられています。
物流現場では、運送契約に記載されている業務と、実際にドライバーが行っている作業が一致しないことがあります。
書類上は運送業務として取り扱われていても、現場では検品、棚入れ、ラベル貼り、伝票処理などの作業が発生します。契約で取り決めた業務の範囲と、実際に行われている作業を照らし合わせなければ、運送会社がどこまでの業務を引き受けているのか判断できません。

(私が見てきた事例)ドライバーがどうして棚まで商品を入れされられているのか

かつて、ある取引先では、取引量の多い上位3社だけが倉庫内に自社専用の棚を持つことができました。営業担当者にとって専用棚を設けてもらうことは、一つの勲章のようなものでした。長年営業を続け、ようやく上位3社に入り、自社専用の棚を用意してもらった。「自分が苦労して注文を取ってきたのだから、商品を棚まで入れるくらい当然だろう」という感覚が営業側にはありました。
ところが、この棚入れ作業の情報は、運送会社と運賃を交渉する物流担当者まで伝わっていませんでした。物流担当者は従来どおりの配送を前提に運賃交渉を行い、実際に配送する二次下請のドライバーが納品先へ行くと、突然「今月からこの棚まで商品を入れてください」と求められました。
ドライバー側から一次下請、さらに元請へ追加作業について申し出ても取り合ってもらえず、その後も棚入れ作業は無償のまま続きました。営業部門にとっては受注拡大の成果でも、実際に運ぶ二次下請の運送会社から見れば、契約にも運賃にも反映されていない新たな作業が一つ増えたことになります。

こうした問題は、荷待ち時間を記録するシステムを導入しただけでは解消しません。作業を依頼しているのは誰か、契約で取り決めた業務なのか、その料金を誰が負担しているのか。現場の作業内容と契約・請求の内容を照合する必要があります。

4.546時間の無償荷役が勧告対象に

2026年7月10日、公正取引委員会は、ミネベアアクセスソリューションズ株式会社に対して取適法に基づく勧告を行いました。
同社は2026年1月から4月までの間、運送を委託した中小受託事業者1社に対し、合計546時間26分の積み込み、荷降ろし及びその他の附帯業務を、費用を負担せずに行わせていました。
公正取引委員会は、取適法第5条第2項第2号の「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」に関する違反を認定しました。同社は勧告前に不利益額の全額を支払っています。
運送会社が荷主の依頼によって荷役を行う場合、運賃を支払っているという理由だけで、附帯業務の費用負担まで適切であるとは限りません。
例えば、車上渡しの契約であれば、積み込みや荷降ろしを誰が担当するのか。軒先渡しの契約でドライバーが荷降ろしを行う場合、その作業の料金をどのように取り決めているのか。
従来から行っている商慣習であっても、契約内容と料金の取決めを改めて確認する必要があります。

5.2027年4月には改正物流特殊指定が施行

2027年4月1日には、改正物流特殊指定が施行されます。正式名称は「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合等の特定の不公正な取引方法」です。
今回の改正では、着荷主による発荷主に対する特定の行為が、新たに規制対象に加わります。
例えば、着荷主の要請によって運送会社に契約外の荷待ちや附帯業務が発生し、その負担が発荷主側に生じる取引も、改正後の規制対象となる場合があります。
これまで発荷主が物流事業者との契約を確認していても、着荷主側でどのような作業が行われているかまでは把握していないことがあります。
物流取引の確認範囲は、発荷主と運送会社の契約から、着荷主の要請によって発生する作業や費用負担へと広がります。
今回の集中監視月間は現行法令に基づいて実施されます。改正物流特殊指定の施行に向けた準備は、2027年4月1日を期限として進めます。

6.荷主企業は何を確認すればよいのか

荷主企業が最初に行うべきことは、契約書、発注書、請求書と物流現場の作業内容を突き合わせることです。

特に、次の5項目を確認します。

① 運送契約と発注内容
運送業務の範囲、荷役・附帯業務の取決め、運賃と料金の区分を整理します。3PL事業者を介している場合は、実際の発注者と取引条件を決めている企業も確認対象です。

② 荷待ち・荷役の実態
到着時刻、作業開始時刻、作業終了時刻、作業内容を把握します。長時間の荷待ちが発生している拠点や、契約外の作業が常態化している拠点を洗い出します。

③ 運賃・料金の取決め
運送会社から価格協議の申入れがあった場合、その経緯と対応結果を確認します。荷待ち料金、積込料、取卸料、附帯業務料について、契約と実際の請求内容に違いがないかも調べます。

④ 発注書面と支払条件
取適法の対象となる取引について、発注内容の明示、支払期日、代金の減額、振込手数料の負担などを点検します。取引条件の決定から支払まで、調達・物流・経理部門の連携が必要です。

⑤ 着荷主からの要請
着荷主側で荷待ちや荷役が発生している場合、誰の指示によるものか、その作業を誰が負担しているのかを調べます。発荷主が把握していない作業や費用があれば、取引条件の見直しにつなげます。

各法令の適用対象や違反の成否は、委託内容、当事者の関係、実際の取引状況によって異なります。ドライバーが荷役を行うこと自体が、一律に禁止されるわけではありません。

7.行政の監視強化に合わせ、契約と現場を点検する

2026年1月の取適法施行、7月の特定運送委託に関する勧告、9月の3機関連携、そして2027年4月の改正物流特殊指定施行。荷主企業を取り巻く物流取引の規制は、着実に変わっています。
今回の集中監視月間では、運送会社や倉庫業者への実態調査から得られた情報も活用されます。荷主企業が契約書の内容を説明できても、物流現場で別の作業が行われていれば、取引内容について改めて確認を受ける可能性があります。
物流部門が荷待ち時間の削減に取り組む一方で、調達部門が運賃を据え置き、経理部門が請求額から調整金を差し引いている。このように、部門ごとに個別の判断をしている場合は、取引全体を通じた確認が欠かせません。
荷主企業は、契約、発注、現場作業、請求、支払の一連の流れを確認し、実際の取引内容に合わせて改善を進める必要があります。

法人代表/行政書士 楠本浩一(くすもと こういち)プロフィール

同志社大学卒業後、パナソニックの物流部門および物流子会社(※)にて物流法務と契約管理に携わり、物流業界での経験は30年以上。荷主企業と物流会社の双方の実務を通じ、物流部門単独では解決できない課題の所在を把握。
独立後は「荷主責任」を切り口としたコンプライアンス実務の専門家として、社内ルールの制定や委託仕様書の作成、社内研修を通じ、荷主企業のリスク低減を支援。

(※)パナソニック物流株式会社(現:パナソニックオペレーショナルエクセレンス㈱の物流部門)

荷主向け提供サービス

物流下請法リスク診断

自社の物流委託構造にどのようなリスクがあるかを整理するサービスです。

👉サービス詳細を見る

物流ガバナンス設計プロジェクト

委託構造・契約・運用体制を一体で見直すプロジェクト型の支援です。

👉サービス詳細を見る

物流下請法 主要記事

目次