CLOを選任しても、それだけで物流現場が変わるわけではありません。
理由は、物流を会社全体で見直し、部門をまたいで動かす役割が社内に置かれていないからです。
しかし改正物流効率化法によって状況は変わりました。中長期計画の作成と定期報告が義務となったことで、物流を会社として動かせない状態が、そのままリスクとして表に出始めています。
物流効率化法では、2025年4月からすべての荷主等への努力義務が始まり、2026年4月から特定荷主等への中長期計画・定期報告・CLO選任などの規制的措置が始まっています。
部門をまたいで動かす役割を持つには二つの大きな壁があります。
🟦一つは「データがない」
🟦もう一つは「見る責任者がいない」
多くの企業が直面しているのは後者です。
この記事を書いた人
行政書士 楠本浩一(行政書士法人運輸交通法務センター 代表)
パナソニックの物流部門・物流子会社にて20年以上、全国100か所以上の物流拠点に入り、契約、発注、支払、附帯作業、荷待ち、荷役、委託先管理の実務を確認してきました。
著書:荷主と物流会社のための物流下請法と「法令違反」防止ガイド
目次
1.「物流担当者」と「物流を動かす責任者」は別です
多くの荷主企業には物流担当者がいます。しかし、物流効率化法が求めているのは、日々の配車や現場対応だけではありません。
物流担当者は、日々の配車、出荷、納品、トラブル対応を担います。一方で、これから必要になるのは、発注条件、契約内容、リードタイム、価格の決め方を、部門をまたいで見直す役割です。
発注条件、契約内容、リードタイム、価格の決め方を、営業、調達、製造、物流の間で見直し、社内の決め方として整える必要があります。
改正物流効率化法が求める中長期計画は、物流部門だけでは作れません。
営業、調達、製造、それぞれの判断が物流にどう影響しているかを確認しなければ、実効性のある計画にならないからです。
この役割がなければ、中長期計画は形式的な書類で終わりかねません。
2.問題は「能力」ではなく「誰が見るのか」が決まっていないことです
担い手がいない理由は、人材不足だけではありません。誰が全体を見て、誰が社内を動かすのかが決まっていないことです。
🟨営業は売上を優先して納期を決める。
🟨調達はコストを下げるために運賃を抑える。
🟨物流はその結果を現場で処理する。
その中で、物流全体を見て判断する責任者が曖昧になっています。
これまではそれでも回っていました。
しかし今は違います。誰が物流全体を見るのかが曖昧なままでは、行政対応や社内監査で説明が難しくなります。
3.放置すれば、中長期計画は実態と合わない書類になります
この状態のまま中長期計画を提出しても、実務では動きません。
物流効率化法では、すべての荷主等に努力義務が課され、一定規模以上の特定荷主等には中長期計画の作成や定期報告が求められます。取組内容や実績を説明できなければ、指導や助言、勧告などにつながる可能性があります。
さらに、トラック・物流Gメンによる情報収集も強化されています。令和6年11月からは倉庫業者からの情報収集も行う体制となり、荷主企業の取引実態は複数のルートから確認されやすくなっています。
データを集めるだけでは足りません。
問題の所在を確認し、優先順位を決め、改善を実行する流れがなければ、報告書は実態を伴わないものになります。
4.見直すべきは「3つの領域」です
物流取引の社内管理で見直すべき点は、大きく3つあります。
第一に、発注ルールの見直しです。
どの部署がどの条件で発注し、それが物流にどの負荷を生んでいるかを確認し、見直します。
第二に、契約内容の見直しです。
附帯作業、荷待ち時間、価格改定条件。曖昧なまま運用されている契約を整理する。
第三に、情報共有の見直しです。
CLOが判断できる情報が社内で共有されているか。物流コストが経営数字として見える状態になっているか。
この3つが動いていなければ、CLOを選任しても実務は変わりません。
5.まず、自社がどこまで見えていないかを把握する
多くの企業が最初につまずくのは、「何をすべきか」ではありません。
「自社の状態が分からない」ことです。
🟦どこにリスクがあるのか。
🟦何が機能していて、何が機能していないのか。
🟦どこから手をつけるべきか。
これが分からないまま動くことが、今は最も危険です。
6.現状を把握せずに進めると、対応は空回りします
当事務所では、荷主企業の物流ガバナンスの現状を
発注ルール、契約内容、書面整備、実運送の把握、支払実務、内部管理、経営層の関与という7領域・50項目で診断しています。
重要なのは、問題の有無を指摘するだけで終わらせず、どこから手をつけるべきかまで整理することです。
制度は動き始めています。
ここから先は、各社が自社の物流をどこまで把握し、どこから見直すかが問われます。まずは、自社の現状を確認するところから始めてください。
法人代表 楠本浩一(くすもと こういち)プロフィール
同志社大学卒業後、パナソニックの物流部門および物流子会社にて20年以上、物流法務と契約管理に従事。荷主企業と物流会社の双方での実務経験を持ち、現場の課題と制度の両面を熟知しています。
現在は行政書士として独立し、「荷主責任」を切り口に物流コンプライアンスの実務指導・契約チェック・社内研修を展開。『物流下請法』の著者として、出版やセミナーを通じて最新の法改正や実務対応を提言し、制度改善に向けた提言活動にも取り組んでいます。荷主責任に関する実務指導の第一人者として、高い評価を得ています。

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