CLOを選任しても、それだけで物流現場が変わるわけではありません。
理由は、物流を会社全体で見直し、部門をまたいで動かす役割が社内に置かれていないからです。
しかし改正物流効率化法によって状況は変わりました。中長期計画の作成と定期報告が義務となったことで、物流を会社として動かせない状態が、そのままリスクとして表に出始めています。
物流効率化法では、2025年4月からすべての荷主等への努力義務が始まり、2026年4月から特定荷主等への中長期計画・定期報告・CLO選任などの規制的措置が始まっています。
部門をまたいで動かす役割を持つには二つの大きな壁があります。
🟦一つは「データがない」
🟦もう一つは「見る責任者がいない」
多くの企業が直面しているのは後者です。
目次
1.「物流担当者」と「物流を動かす責任者」は別です
多くの荷主企業には物流担当者がいます。しかし、物流効率化法が求めているのは、日々の配車や現場対応だけではありません。
物流担当者は、日々の配車、出荷、納品、トラブル対応を担います。一方で、これから必要になるのは、発注条件、契約内容、リードタイム、価格の決め方を、部門をまたいで見直す役割です。
発注条件、契約内容、リードタイム、価格の決め方を、営業、調達、製造、物流の間で見直し、社内の決め方として整える必要があります。
改正物流効率化法が求める中長期計画は、物流部門だけでは作れません。
営業、調達、製造、それぞれの判断が物流にどう影響しているかを確認しなければ、実効性のある計画にならないからです。
この役割がなければ、中長期計画は形式的な書類で終わりかねません。
2.問題は「能力」ではなく「誰が見るのか」が決まっていないことです
担い手がいない理由は、人材不足だけではありません。誰が全体を見て、誰が社内を動かすのかが決まっていないことです。
🟨営業は売上を優先して納期を決める。
🟨調達はコストを下げるために運賃を抑える。
🟨物流はその結果を現場で処理する。
その中で、物流全体を見て判断する責任者が曖昧になっています。
これまではそれでも回っていました。
しかし今は違います。誰が物流全体を見るのかが曖昧なままでは、行政対応や社内監査で説明が難しくなります。
3.放置すれば、中長期計画は実態と合わない書類になります
この状態のまま中長期計画を提出しても、実務では動きません。
物流効率化法では、すべての荷主等に努力義務が課され、一定規模以上の特定荷主等には中長期計画の作成や定期報告が求められます。取組内容や実績を説明できなければ、指導や助言、勧告などにつながる可能性があります。
さらに、トラック・物流Gメンによる情報収集も強化されています。令和6年11月からは倉庫業者からの情報収集も行う体制となり、荷主企業の取引実態は複数のルートから確認されやすくなっています。
データを集めるだけでは足りません。
問題の所在を確認し、優先順位を決め、改善を実行する流れがなければ、報告書は実態を伴わないものになります。
4.見直すべきは「3つの領域」です
物流取引の社内管理で見直すべき点は、大きく3つあります。
第一に、発注ルールの見直しです。
どの部署がどの条件で発注し、それが物流にどの負荷を生んでいるかを確認し、見直します。
第二に、契約内容の見直しです。
附帯作業、荷待ち時間、価格改定条件。曖昧なまま運用されている契約を整理する。
第三に、情報共有の見直しです。
CLOが判断できる情報が社内で共有されているか。物流コストが経営数字として見える状態になっているか。
この3つが動いていなければ、CLOを選任しても実務は変わりません。
5.まず、自社がどこまで見えていないかを把握する
多くの企業が最初につまずくのは、「何をすべきか」ではありません。
「自社の状態が分からない」ことです。
🟦どこにリスクがあるのか。
🟦何が機能していて、何が機能していないのか。
🟦どこから手をつけるべきか。
これが分からないまま動くことが、今は最も危険です。
6.現状を把握せずに進めると、対応は空回りします
当事務所では、荷主企業の物流ガバナンスの現状を
発注ルール、契約内容、書面整備、実運送の把握、支払実務、内部管理、経営層の関与という7領域・50項目で診断しています。
重要なのは、問題の有無を指摘するだけで終わらせず、どこから手をつけるべきかまで整理することです。
制度は動き始めています。
ここから先は、各社が自社の物流をどこまで把握し、どこから見直すかが問われます。まずは、自社の現状を確認するところから始めてください。
7.取適法(旧下請法)・物流特殊指定の対応状況を整理したい企業へ
制度改正により、物流取引における荷主企業が確認すべき範囲は広がっています。契約書の整備だけでなく、発注条件や現場の運用実態まで含めて整理しておくことが重要です。
行政書士法人運輸交通法務センターでは、当法人が独自に作成した50項目のチェックリストに基づき、現在の制度対応上、確認すべき点を整理する診断を実施しています。発注条件、契約内容、運用実態を一連の流れで確認し、制度改正後に説明しにくい部分や、優先して見直すべき点を整理します。
自社の対応状況を整理したい場合は、下記物流下請法リスク診断を参照してください。
診断後に、契約、現場運用、支払、社内管理まで継続的に整えたい場合は、物流ガバナンス設計プロジェクトも確認してください。
8.監修者紹介・法人紹介
行政書士 楠本浩一は、物流分野における取適法(旧下請法)の実務に取り組む物流法務の実務家です。著書『荷主と物流会社のための物流下請法と「法令違反」防止ガイド』を出版し、物流分野における法令対応と、荷主企業の実務に即した管理体制づくりに取り組んできました。
パナソニックの物流部門において物流法務を専任で担当。その後、物流子会社へ出向し、同社においても物流法務の責任者を務めました。荷主側と物流会社側の双方で法務責任を担い、契約実務、委託先管理、現場運用の確認までを含む実務を20年以上にわたり経験してきました。
主な実務領域
🟦物流発注契約の見直し 🟦委託先との関係整理 🟦元請・実運送会社との法的整理
🟦契約内容と現場実態が一致していない部分の確認・改善 🟦取適法(旧下請法)および物流特殊指定対応
これまでに全国100か所以上の物流拠点に入り、倉庫・輸送・積込・待機・附帯作業の実態を確認。契約書の条文だけでは拾いきれない現場の実態を修正する実務を積み重ねてきました。
物流トラブルの多くは運送会社側ではなく、荷主側の発注条件や社内管理に起因しています。制度は読むだけではなく、現場で動く形にしなければ意味がありません。この視点から、物流・運送業専門の行政書士として活動しています。
講師・掲載実績
東海電子主催セミナー講師、SMBCコンサルティング【NETPRESS】、日本実業出版社【企業実務】、物流ニッポン、物流ウイークリー、プレジデント、東洋経済等、多数
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行政書士法人 運輸交通法務センターは、その名称の通り、運送・物流分野に特化した専門家集団です。
行政書士の独占業務である許認可手続にとどまらず、荷主企業向けの物流取引管理、契約・現場運用・支払の確認にも力を入れています。
専門領域
- 荷主側の物流発注ルールの見直し ・契約内容と現場運用の確認
- 待機時間・附帯作業を含めた物流実務の点検
- 「物流下請法」を軸とした社内管理体制の整備
製造業・流通業・小売業といった荷主企業に対し、問題が起きてから対応するのではなく、契約、発注、現場運用、支払の流れを事前に確認し、説明できる状態に整える物流法務を重視しています。
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