CLOを選任しても、ほとんどの企業は動きません。
理由は単純です。「物流ガナバンスを設計していく機能が社内に存在しない」からです。
しかし改正物流効率化法によって状況は変わりました。中長期計画の作成と定期報告が義務となったことで、「設計できない状態」がそのままリスクとして顕在化しています。
前回の記事で「自社の現状が見えていない」と述べました。この「見えていない」には二つあります。
🟦一つは「データがない」
🟦もう一つは「見る責任者がいない」
多くの企業が直面しているのは後者です。
目次
1.「物流担当者」と「物流ガバナンス設計者」は別の機能です
多くの荷主企業には物流担当者がいます。しかし、今の制度が求めているのはその延長ではありません。
🟨物流担当者は、問題が起きてから対応する人間です。
🟦物流ガバナンス設計者は、問題が起きない状態を設計する人間です。
発注条件、契約内容、リードタイム、価格の決め方。これらを部門横断で見直し、意思決定のルールとして組み直す。これが求められている機能です。
改正物流効率化法が求める中長期計画は、物流部門だけでは作れません。
営業、調達、製造、それぞれの判断が物流にどう影響しているかを整理しなければ成立しないからです。
この機能がなければ、計画は形式的な書類で終わります。
2.問題は「能力」ではなく「責任の空白」です
設計者がいない理由は、人材不足ではありません。「誰が全体を設計するのか」が決まっていないことです。
🟨営業は売上を優先して納期を決める。
🟨調達はコストを下げるために運賃を抑える。
🟨物流はその結果を現場で処理する。
この分断の中で、全体を最適化する責任を持つ人間が存在していません。
これまではそれでも回っていました。
しかし今は違います。この状態そのものがリスクとして認識される段階に入っています。
3.放置すれば、計画は形骸化し是正指導の対象になります
この状態のまま中長期計画を提出しても、意味はありません。
改正物流効率化法の「努力義務」は報告義務と一体です。取り組みの内容と結果を説明できなければ、行政指導の対象になります。
さらに、トラック・物流Gメンによる監視は強化されています。倉庫事業者を含めた複数ルートから、荷主企業の取引実態は把握される状況にあります。
データを集めるだけでは足りません。
🟨問題の所在を特定し
🟨優先順位を決め
🟨改善を実行する仕組み
がなければ、報告は成立しません。
4.設計すべきは「3つの領域」です
物流ガバナンスの設計とは、次の3つを再構築することです。
第一に、発注の設計。
どの部署がどの条件で発注し、それが物流にどの負荷を生んでいるかを可視化し、見直す。
第二に、契約の設計。
附帯作業、荷待ち時間、価格改定条件。曖昧なまま運用されている契約を整理する。
第三に、情報の設計。
CLOが判断できる情報が社内で共有されているか。物流コストが経営数字として見える状態になっているか。
この3つが揃っていなければ、CLOを選任しても機能しません。
5.まず、自社がどこまで見えていないかを把握する
多くの企業が最初に躓くのは、「何をすべきか」ではありません。
「自社の状態が分からない」ことです。
🟦どこにリスクがあるのか。
🟦何が機能していて、何が機能していないのか。
🟦どこから手をつけるべきか。
これが分からないまま動くことが、今は最も危険です。
6.現状を把握せずに進めるのはやめてください
当事務所では、荷主企業の物流ガバナンスの現状を
発注構造、契約体系、書面整備、実運送体制、支払構造、内部統制、経営ガバナンスの7領域・50項目で診断しています。
重要なのは、「どこに問題があるか」ではなく、「どこから手をつけるべきか」を明確にすることです。
制度は整いました。
ここから先は、自社が対応するかどうかだけです。
まず、自社の現状を直視するところから始めてください。
7.物流下請法への対応状況を整理したい企業へ
制度改正により、物流取引における荷主企業の責任範囲は大きく変化しています。契約書の整備だけでなく、発注条件や現場の運用実態まで含めて整理しておくことが重要です。
行政書士法人運輸交通法務センターでは、当法人が独自に開発した50項目のチェックリストに基づき、現在の制度対応リスクを整理する診断を実施しています。発注条件、契約内容、運用実態を横断的に確認し、制度改正後の是正勧告リスクの有無を客観的に可視化します。
自社の対応状況を整理したい場合は、下記物流下請法リスク診断を参照してください。
診断だけではなく、根本的に解決したい方は、物流ガバナンス設計プロジェクトを参照してください。
8.監修者紹介・法人紹介
行政書士 楠本浩一は、物流分野における取適法(旧下請法)の実務に取り組む物流法務の実務家です。著書『荷主と物流会社のための物流下請法と「法令違反」防止ガイド』を出版し、物流分野における法令遵守とガバナンス設計を体系化してきました。
パナソニックの物流部門において物流法務を専任で担当。その後、物流子会社へ出向し、同社においても物流法務の責任者を務めました。荷主側と物流会社側の双方で法務責任を担い、契約設計、委託構造、運用統制までを含む実務を20年以上にわたり経験してきました。
主な実務領域
🟦物流発注契約の設計 ・委託スキームの構築 ・元請・実運送会社との法的整理
🟦契約と現場実態の乖離是正 ・取適法(旧下請法)および物流特殊指定対応
これまでに全国100か所以上の物流拠点に入り、倉庫・輸送・積込・待機・附帯作業の実態を確認。契約書の条文と現場の間にある運用上の隔たりを修正する実務を積み重ねてきました。
物流トラブルの多くは運送会社側ではなく、荷主側の発注設計とガバナンス構造に起因しています。制度は守るものではなく、設計するもの、この視点から物流・運送業専門の行政書士へ転身し活動しています。
講師・掲載実績
東海電子主催セミナー講師、SMBCコンサルティング【NETPRESS】、日本実業出版社【企業実務】、物流ニッポン、物流ウイークリー、プレジデント、東洋経済、等多数
– 荷主のための物流ガバナンス設計…
実績|メディア掲載・講演実績 –
行政書士法人運輸交通法務センターおよび代表 楠本浩一については以下をご覧ください。 荷主側で物流実務と物流法務
行政書士法人 運輸交通法務センター
行政書士法人 運輸交通法務センターは、その名称の通り、運送・物流分野に特化した専門家集団です。
行政書士の独占業務である許認可手続にとどまらず、行政書士の「外側」にある非独占領域、すなわち荷主企業向けの物流ガバナンス構築に重点を置いています。
専門領域
- 荷主側の物流発注設計 ・契約と現場運用の整合
- 待機時間・附帯作業を含めた実務構造の見直し
- 「物流下請法」を軸としたガバナンス設計
製造業・流通業・小売業といった荷主企業に対し、問題が起きてから対処する事後対応型ではなく、問題が起きない構造を先につくる事前設計型(予防型)の物流法務を提供している点が最大の特徴です。
各行政書士には専属の一般職員が付き、書類作成・情報整理・進行管理を分担。特定の担当者に依存せず継続的に案件を進められる体制を整えています。
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荷主企業の物流取引に潜む法務リスクを整理する「物流下請法リスク診断」。取適法(旧下請法)・物流特殊指定を踏まえ、発注構造・契約・現場運用を50項目チェックリストで診断します。製造業・流通業・小売業向け全国対応します。
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物流特殊指定・取適法(旧下請法)に対応し、発注構造から見直す実務支援。荷待ち・附帯作業・価格決定の問題を「現場対応」ではなく「設計」で解決します。制度改正後の是正勧告リスクに備えたい荷主企業向けのプロジェクトです。
物流ガバナンスを、1年間で企業内部に構築し、外部に依存しない、自走できる体制をつくります。