着荷主の附帯作業とは?
物流特殊指定改正で問題になる荷降ろし・検品・棚入れ
荷降ろしまでやってもらうのは当然だと思っていませんか。
検品を手伝ってもらうのは、昔からの慣習だと思っていませんか。
「昔から」には、理由があります。
昭和の時代、販売した商品を営業担当者が自社のトラックやバンに積み込み、お客様のもとへ届けるという形態が、多くの業界で根強く残っていました。
お客様が自社商品のために倉庫内に専用の棚を用意してくれることは、営業担当者にとって大変名誉なことでした。専用の棚を確保できないその他大勢のサプライヤーにならないよう、営業担当者は必死に動いていました。
注文が入れば、自社倉庫から商品を積み込み、お客様の事務所に挨拶してから倉庫へ入る。そして、自社品番が書かれた棚に商品を収容して納品完了。
これが、当たり前の納品でした。
この商慣習が、物流の外注化が進んだ後も残り続けました。
営業担当者が運んでいた時代には当然だった「棚まで入れる」という作業が、運送会社のドライバーが運ぶようになっても、そのまま引き継がれたのです。
運送契約の中に「棚入れ」が明記されているわけではない。対価が決まっているわけでもない。それでも、納品先の現場では「いつもの納品」として処理される。
ここに、着荷主の附帯作業が無償で残りやすい理由があります。
しかし、令和9年4月以降、その前提は危うくなります。
問題は、運送事業者が作業をしたかどうかだけではありません。誰が頼んだ作業なのか。運送契約に含まれているのか。対価は決まっているのか。作業中に商品を破損した場合や、ドライバーがけがをした場合、誰の責任になるのか。
ここを曖昧にしたまま、納品先の現場で「昔からそうしている」と処理していると、着荷主側の取引管理の問題になります。
着荷主の附帯作業は、単なる現場の手伝いではありません。
運送事業者に何をさせているのか。その作業に対価があるのか。事故や破損が起きた場合にどう扱うのか。
これらを含めて、取引条件の問題として整理する必要があります。
この記事を書いた人
行政書士 楠本浩一(行政書士法人運輸交通法務センター 代表)
パナソニックの物流部門・物流子会社にて20年以上、全国100か所以上の物流拠点に入り、契約、発注、支払、附帯作業、荷待ち、荷役、委託先管理の実務を確認してきました。
著書:荷主と物流会社のための物流下請法と「法令違反」防止ガイド

1.附帯作業とは何か
附帯作業とは、運送そのものに付随して発生する作業をいいます。
ただし、ここで注意すべきなのは、すべての作業が当然に運送契約に含まれるわけではないという点です。
運送の中心は、物品を指定された場所まで運ぶことです。どこからどこまで運ぶのか。どの車両で運ぶのか。いつ引き取り、いつ届けるのか。これが運送契約の基本です。
これに対して、納品先で求められる作業の中には、運ぶこととは別の性質を持つものがあります。
荷降ろし
たとえば、荷降ろしがあります。荷台から商品を降ろす作業です。契約上、荷降ろしまで含まれている場合もありますが、当然にどこまでも含まれるわけではありません。
車上渡しのつもりで運送しているのに、現場では倉庫内の指定場所まで運ばせている場合、運送契約で予定していた範囲を超えた作業になっている可能性があります。
検品
検品も問題になりやすい作業です。納品された商品の数量や状態を確認する作業は、本来、受け取る側の業務として行われることが多いものです。
ところが現場では、ドライバーが検品に立ち会い、数量確認を手伝い、検品が終わるまでその場に残ることがあります。
仕分け・棚入れ
仕分けや棚入れも同じです。
納品された商品を店舗別、棚番別、品番別に分ける。倉庫内の棚に入れる。指定された場所へ移動させる。こうした作業は、単なる運送とは別の作業として整理すべき場合があります。
ラベル貼り・養生・梱包のやり直し
ラベル貼り、養生、梱包のやり直しもあります。
納品先で「このラベルを貼ってください」「この荷姿では困るので巻き直してください」「ここに傷が付かないように養生してください」と言われることがあります。現場では小さな作業に見えるかもしれません。しかし、運送事業者にとっては、時間も手間もかかる追加作業です。
重要なのは、作業の名前ではありません。
その作業が、運送契約の中で予定されていたものなのか。対価が決まっているものなのか。納品先でその場の判断により追加で求められているものなのか。
ここを分けて考える必要があります。
荷降ろし、検品、仕分け、棚入れ、ラベル貼り、養生、梱包。これらは、現場では「ついでにお願いします」と言われやすい作業です。
しかし、運送事業者から見れば、それは拘束時間であり、人件費であり、事故や破損のリスクを伴う作業です。
2.附帯作業は現場でどのように発生しているか
附帯作業は、最初から大きな要求として出てくるとは限りません。
多くの場合、納品先の現場で、少しずつ発生します。
たとえば、納品先で「そこまで入れてください」と言われる。指定された棚に置くよう求められる。検品が終わるまで横で待つように言われる。ラベルの貼り替えや、荷姿の巻き直しをその場で頼まれる。
こうした依頼は、現場では強い命令として言われるわけではないことがあります。納品先の担当者からすれば、いつもの流れの中で、少し手伝ってもらっているだけという感覚です。
しかし、運送事業者から見ると、それは契約にない作業である可能性があります。
ドライバーは、納品先でその場の空気を見ながら対応します。目の前に商品があり、荷降ろしが終わらなければ次の配送に行けません。納品先の担当者と揉めれば、発荷主に連絡が入るかもしれません。発荷主との取引関係を考えると、その場で「それは契約外です」と言い切ることは簡単ではありません。
筆者が物流の現場で見てきた中でも、附帯作業は「作業」として認識されていないことが少なくありませんでした。営業担当者が納品していた時代の名残で、棚まで入れることが当然になっている。倉庫の担当者も、ドライバーも、それを特別な作業だとは思っていない。ところが、実際には運送会社のドライバーが、運送契約には書かれていない作業を担っている。
そのため、現場では「ついでにお願いします」が通ってしまいます。
最初は、荷台から降ろした商品を少し奥に置くだけだったかもしれません。次は、指定された棚の前まで運ぶようになる。そのうち、棚に入れるところまで求められる。さらに、数量確認やラベルの確認まで手伝うようになる。
一つ一つは、小さな作業に見えます。
しかし、それが毎日、毎便、同じ納品先で繰り返されれば、運送事業者にとっては明確な負担になります。作業時間が伸びて次の配送が遅れるだけでなく、荷扱い中の商品破損や、重量物によるドライバーのけがのリスクも伴います。
附帯作業がやっかいなのは、現場では「親切な対応」として処理されやすいことです。
納品先の担当者は、「少し手伝ってもらっただけ」と考えます。ドライバーも、現場を止めないために対応します。発荷主は、納品先で実際にどのような作業が行われているかを把握していないことがあります。着荷主の本社も、現場でドライバーが棚入れや検品補助をしていることを知らないことがあります。
こうして、契約にない作業が、誰にも正式に確認されないまま現場対応として残っていきます。
外注倉庫会社や作業会社の現場ルールにも注意が必要です
もう一つ見落とされやすいのが、着荷主企業の本社が附帯作業の実態を把握していないケースです。
納品現場の運営を外注倉庫会社に任せている場合、受入のルールや作業の段取りは、倉庫会社が決めていることがあります。さらに、その倉庫会社が荷役作業会社や構内作業会社に実務を委託している場合、現場の細かな運用は、作業会社の判断で動いていることもあります。
検品が終わるまでドライバーに待機してもらい、棚入れや仕分けもその場で対応してもらうという運用が、着荷主の本社が知らないまま、倉庫会社や作業会社の現場ルールとして固定化されていることがあります。
着荷主企業としては「受入は倉庫会社に任せている」という認識でいても、現場では外注先が作ったルールによって、運送事業者に契約外の作業が求められている。着荷主の本社が「うちは特別な作業は頼んでいない」と考えていても、現場の実態は別のところにあることがあります。
そのため、着荷主の附帯作業を考えるときは、自社の担当者が直接指示した作業だけでなく、委託先の倉庫会社や作業会社の現場運用まで見ておく必要があります。
「倉庫会社に任せているから知らない」では、附帯作業の問題を整理したことにはなりません。
一度の「ついで」が慣習になる
この状態が続くと、附帯作業は慣習になります。
慣習になると、さらに断りにくくなります。前任のドライバーはやっていた。前の運送会社もやっていた。他の納品業者もやっている。だから今回もやってもらう。
こうなると、現場の担当者は強制しているつもりがなくても、運送事業者にとっては事実上断ることができない作業になります。
着荷主の附帯作業は、このようにして発生します。
一度の「ついでにお願いします」が問題なのではありません。その依頼が繰り返され、契約にも対価にも反映されないまま、現場の当たり前になっていくことが問題です。
3.なぜ附帯作業は無償になりやすいのか
附帯作業が問題になるのは、作業そのものがあるからではありません。
問題は、その作業が費用として扱われにくいことです。
荷降ろし、検品補助、仕分け、棚入れ、ラベル貼り。こうした作業には、本来、時間と人手がかかります。作業中に商品を破損する可能性もありますし、重量物を扱えばドライバーがけがをすることもあります。
それでも現場では、附帯作業が無償のまま残りやすい。
その理由は、関係者それぞれが、その作業を正面から費用として見ていないからです。
着荷主の現場では「少し手伝ってもらっただけ」に見える
着荷主の現場から見ると、附帯作業は「少し手伝ってもらっただけ」に見えます。荷台から降ろした商品を、少し奥に入れてもらう。検品が終わるまで横で待ってもらう。棚の前まで運んでもらう。ラベルを貼り替えてもらう。現場担当者は、それを特別な発注だとは考えていないことがあります。
しかし、運送事業者から見れば、それは作業です。
数分で終わる場合もあれば、30分以上かかる場合もあります。複数の納品先で同じような作業が重なれば、その日の運行全体に影響します。車両は次の配送に向かえず、ドライバーの拘束時間も伸びます。
発荷主からも見えにくい問題です
発荷主の側から見ると、附帯作業は見えにくい問題です。運送事業者には商品を届けることを依頼していても、納品先でドライバーがどこまで作業しているのかまでは把握していないことがあります。車上渡しのつもりだったのに現場では棚入れまで行われ、検品は着荷主側の作業だと思っていたのに、実際にはドライバーが数量確認を手伝っている。こうして、発荷主にとっては「納品先でのこと」、着荷主にとっては「いつもの受入作業」とされる間で、運送事業者だけが作業を引き受けていることがあります。
運送事業者も簡単には断れない
運送事業者も、簡単には断れません。納品先で作業を断れば、その場の空気が悪くなります。発荷主に苦情が入るかもしれません。次回から仕事が減るのではないかという不安もあります。特に継続取引では、現場で強く断ることよりも、その場を収めることが優先されがちです。
こうして、附帯作業は費用として扱われないまま残ります。
そうなると、作業範囲も対価も曖昧なまま、現場の対応だけが続いていきます。
この状態が続くと、附帯作業は「無償でやってもらうもの」として固定化されます。
最初は一度だけの手伝いだったものが、次の納品でも求められるようになる。前回やってもらったから、今回も当然だと受け止められる。担当者が代わっても、現場の引き継ぎの中で「この運送会社はここまでやってくれる」と扱われる。
こうなると、附帯作業は契約外の作業でありながら、現場では当然の作業になります。
ここに、着荷主の附帯作業が無償になりやすい理由があります。
誰かが明確に「無償でやってください」と言っているとは限りません。それでも、作業範囲を決めず、対価を決めず、責任の所在を決めないまま続けていれば、結果として運送事業者の負担として残ります。
附帯作業を費用として扱わないまま続けることが、令和9年4月以降、取引上の問題として問われます。
4.物流特殊指定改正で何が問題になるか
令和9年4月1日から施行される改正物流特殊指定では、着荷主による附帯作業の問題も、これまで以上に正面から問われるようになります。
ここで重要なのは、附帯作業そのものが直ちに問題になるということではありません。
問題になるのは、契約に含まれていない作業を、対価や条件を決めないまま、運送事業者に求めている状態です。
納品先で荷降ろしをしてもらう。検品に立ち会ってもらう。棚入れをしてもらう。ラベルを貼り替えてもらう。こうした作業が、運送契約の中で予定され、対価も決まっているのであれば、直ちに問題になるわけではありません。
しかし、実際の現場では、そうなっていないことがあります。
契約書には「車上渡し」と書かれているのに、現場では倉庫内の棚まで入れてもらっている。運送条件には検品補助が含まれていないのに、ドライバーが数量確認に付き合っている。ラベル貼りや荷姿の手直しを、その場の判断で頼んでいる。
このような状態では、運送事業者は契約にない作業を行っていることになります。
しかも、その作業について対価が決まっていなければ、運送事業者の無償負担として残ります。作業時間が延びれば、次の運行にも影響します。荷扱い中に商品を破損した場合や、ドライバーがけがをした場合には、責任の所在も問題になります。
物流特殊指定改正で問われるのは、この部分です。
着荷主が「少し手伝ってもらっただけ」と考えていても、運送事業者から見れば、時間と人手を使った作業です。発荷主が「納品先でのこと」と考えていても、運送事業者には現実に負担が発生しています。
契約外の附帯作業を、誰が依頼したのか。誰が費用を負担するのか。作業中の事故や破損をどのように扱うのか。
ここを決めないまま、現場の慣習として続けていることが問題になります。
直接契約がない着荷主も確認が必要です
特に注意が必要なのは、着荷主が運送事業者と直接契約していない場合です。
着荷主からすれば、運送契約の当事者ではないため、附帯作業の対価までは意識していないことがあります。しかし、納品先の現場でドライバーに作業を求めているのであれば、その作業は取引上の負担として扱われる可能性があります。
「昔からやってもらっている」「他の運送会社もやっている」という説明や、「納品の流れとして当然だと思っていた」という認識だけでは、契約外附帯作業の問題に対する答えにはなりません。
令和9年4月以降は、納品先で求めている作業が、運送契約に含まれているのか、対価が決まっているのか、責任の所在が整理されているのかを確認する必要があります。
トラック・物流Gメンの活動によって、現場で発生している荷待ちや附帯作業の情報も、行政に届きやすくなっています。
だからこそ、着荷主は、附帯作業を「現場の手伝い」として片付けるのではなく、取引条件の一部として扱う必要があります。
令和9年4月以降、契約外の附帯作業は、取引上の問題として扱われます。
5.着荷主が確認すべきは作業範囲・対価・責任です
着荷主が確認すべきなのは、納品現場でドライバーに何をさせているのかです。
附帯作業の問題は、受付体制やバース運用の話とは少し違います。もちろん、納品の流れを整えることは必要です。しかし、附帯作業でまず確認すべきなのは、運送事業者に求めている作業の範囲、その作業に対する対価、そして事故や破損が起きた場合の責任です。
車上渡しのつもりで運送を依頼しているのに、現場では倉庫内の棚まで商品を入れてもらっていないか。荷降ろしまでの契約のはずが、仕分けや棚入れまでドライバーが行っていないか。検品は着荷主側の業務であるはずなのに、ドライバーが数量確認や不良品確認に立ち会い続けていないか。
ここを確認しないままでは、契約書と現場が乖離していきます。
現場では、少し手伝ってもらっているだけに見えるかもしれません。しかし、運送事業者にとっては、その作業に時間と人手がかかります。納品先で棚入れをすれば、その分だけ拘束時間は延びます。検品補助が長引けば、次の配送にも影響します。ラベル貼りや荷姿の手直しをすれば、運送とは別の作業を引き受けていることになります。
対価と費用負担を確認する
その作業に対する対価が決まっているかも確認が必要です。
運賃に含まれているのか、別料金として扱うのか、追加費用の支払い条件はどうするのか、発荷主と着荷主のどちらが負担するのか、外注倉庫会社の運用による場合はその契約でどう扱うのかを整理する必要があります。
この整理がないまま、現場だけが従来どおり動いていると、附帯作業は運送事業者の無償負担として残ります。
事故や破損時の責任も確認する
さらに、事故や破損時の責任も曖昧になりやすいところです。
棚入れ中の商品破損、検品補助中の確認漏れ、重量物運搬中のドライバーのけがが起きた場合に、誰の責任として扱うのかが決まっていなければ、問題が起きてから初めて争いになります。
着荷主が運送事業者と直接契約していない場合でも、納品先でドライバーに作業を求めているのであれば、その作業がどのように扱われているかを確認する必要があります。発荷主との契約、運送事業者との運送条件、外注倉庫会社との業務委託条件が、それぞれ別々に動いていると、現場で発生している附帯作業だけが抜け落ちることがあります。
令和9年4月以降、着荷主に求められるのは、現場担当者を責めることではありません。
必要なのは、現場で行われている作業を、取引条件として確認することです。荷降ろしの範囲、検品補助や棚入れの契約上の位置づけ、追加作業の対価の扱い、事故・破損時の責任の所在がどうなっているかです。
ここを確認しないまま、「昔からやってもらっている」「現場ではそういう流れになっている」という説明で済ませることはできません。
附帯作業を誰が頼み、誰が費用を負担し、問題が起きたときに誰が責任を負うのか。
ここを決めないままでは、着荷主の現場で行われている作業は、運送事業者の負担として残り続けます。

同志社大学卒業後、パナソニックの物流部門および物流子会社にて20年以上、物流法務と契約管理に従事。荷主企業と物流会社の双方での実務経験を持ち、現場の課題と制度の両面を熟知しています。
現在は行政書士として独立し、「荷主責任」を切り口に物流コンプライアンスの実務指導・契約チェック・社内研修を展開。『物流下請法』の著者として、出版やセミナーを通じて最新の法改正や実務対応を提言し、制度改善に向けた提言活動にも取り組んでいます。荷主責任に関する実務指導の第一人者として、高い評価を得ています。







