着荷主規制とは?物流特殊指定改正で問われる納品先の責任と発荷主の対応

着荷主規制とは?物流特殊指定改正で問われる納品先の責任と発荷主の対応

令和9年4月1日から、納品先の「ちょっと待ってください」が問題になります

運送事業者に「ちょっと待ってください」と言うのは、誰でしょうか。

実際の物流現場では、トラックを待たせているのは発荷主ではなく、納品先であることが少なくありません。検品が終わるまで待ってほしい。棚まで入れてほしい。予定と違うが、もう一度持ってきてほしい。今日は別の場所に降ろしてほしい。

こうした指示は、発荷主ではなく、着荷主の現場から出ています。

しかし、運送事業者と契約しているのは、通常、発荷主です。追加費用を請求する相手も、発荷主になります。

つまり、待たせる人と、費用を支払う人が違う。

ここに、これまでの物流取引の難しさがありました。

令和9年4月1日から、この前提が変わります。

令和8年6月17日、公正取引委員会は物流特殊指定の改正を公表しました。改正後の物流特殊指定では、着荷主が物流事業者を通じて発荷主に契約外の荷待ちや附帯作業等を行わせる行為が、新たに規制対象となります。

今回の改正は、発荷主だけを見ていても物流取引の問題は解決しないという現実を、制度が正面から認めたものです。


この記事を書いた人
行政書士 楠本浩一(行政書士法人運輸交通法務センター 代表)
パナソニックの物流部門・物流子会社にて20年以上、全国100か所以上の物流拠点に入り、契約、発注、支払、附帯作業、荷待ち、荷役、委託先管理の実務を確認してきました。
著書:荷主と物流会社のための物流下請法と「法令違反」防止ガイド

目次

1.物流特殊指定改正の告示が公表されました

令和8年6月17日、公正取引委員会は「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合等の特定の不公正な取引方法」等について公表しました。

改正後の物流特殊指定は、令和9年4月1日から施行されます。

今回の改正は、単に条文が増えたという話ではありません。物流現場で長年問題となってきた、着荷主起点の荷待ちや附帯作業に正面から対応するための改正です。

これまでの物流特殊指定では、発荷主と物流事業者との関係が中心でした。しかし、実際には、発荷主が運送事業者に無理を言っていなくても、納品先である着荷主の指示や受入体制によって、荷待ちや契約外の作業が発生することがあります。

発荷主は運送契約を結んでいます。着荷主は納品現場で指示を出しています。運送事業者は、その間で対応しています。

この三者の関係が、今回の改正で大きく問われることになります。

2.なぜ着荷主規制が導入されたのか

着荷主規制が導入された理由は明確です。

物流現場で発生している荷待ちや附帯作業の中には、発荷主ではなく、着荷主側の事情によって生じているものがあるからです。

納品先の受付が混んでいてトラックが待たされる。検品が終わるまで荷降ろしを始められない。契約にはない棚入れや仕分けを求められる。納品時間を変更されたり、納品場所を変えられたりする。

こうしたことは、現場では珍しくありません。

発荷主が運送事業者に通常どおり運送を委託していたとしても、納品先で着荷主が追加の負担を求めれば、運送事業者には待機時間や作業時間が発生します。

問題は、その費用を誰が負担するのかです。

運送事業者は、着荷主と直接契約していない場合があります。その場合、着荷主に直接費用を請求しにくい。発荷主に請求しようとしても、「それは納品先の都合だ」と言われることがある。結果として、運送事業者が費用を負担したままになることがあります。

筆者は、メーカーの物流部門や物流子会社で、発荷主側と物流事業者側の双方の立場を見てきました。納品先の担当者が何気なく言う「少し待ってください」「そこまで入れてください」という言葉が、運送事業者にとっては拘束時間や追加作業になる場面を何度も見てきました。

その場では、誰も法律問題だとは思っていません。現場の調整として処理されます。

しかし、令和9年4月1日以降は、着荷主も「運送事業者と直接契約していないから関係ない」とは言い切れなくなります。

3.着荷主規制の具体的な内容

改正物流特殊指定では、特定着荷主が、一定の物品の引渡しを受ける場合に、特定発荷主の利益を不当に害する行為が規制対象となります。

ここでいう特定着荷主とは、一定規模以上の事業者や取引上優越した地位にある事業者で、継続的な取引の相手方として物品の引渡しを受ける者です。

今回の着荷主規制で特に注意すべきなのは、契約外の附帯作業を求める行為と、契約外の荷待ちややり直しを求める行為です。

契約外の附帯作業とは、荷降ろし、検品、仕分け、棚入れ、ラベル貼りなど、運送そのものとは別の作業です。契約で作業範囲と対価が整理されていれば、直ちに問題になるわけではありません。問題になるのは、位置づけや費用負担が曖昧なまま、着荷主側の都合で物流事業者に作業をさせる場合です。

契約外の荷待ちややり直しも問題になります。納品先の都合で予定時間に受け入れられず長時間待機させる。指定場所に納品した後で別の場所に運び直させる。検品の都合で運送事業者に再度対応を求める。

このような行為が、発荷主の利益を不当に害する形で行われれば、改正物流特殊指定上の問題となる可能性があります。

着荷主が運送事業者と直接契約していなくても、着荷主の指示や受入条件によって、発荷主が運送事業者に追加対応をさせる結果になれば、規制対象となる可能性があります。

課徴金がある制度ではありません。しかし、問題があれば排除措置命令、警告、注意などの対象となり得ます。企業名が公表されるリスクもあります。

着荷主にとって、これは物流部門だけの問題ではありません。購買、店舗、倉庫、品質管理、製造、営業部門を含む、会社全体の取引管理の問題です。

4.経団連が意見を提出した意味

今回の物流特殊指定改正に対して、経団連を含む産業界から66件の意見が提出されています。

経団連は、取引適正化の方向性を評価しつつ、文言や趣旨の明確化、実務上の適切な運用を求めています。

この事実が示しているのは何か。

物流業界の問題が、荷主側の経済団体の対応事項になったということです。

経団連の会員は、製造業、流通業、建設業などの大手企業が中心です。これらの企業は、発荷主でもあり、着荷主でもあります。自社が納品を受ける立場で、着荷主規制の対象になり得るということを、経団連は認識したうえで意見を提出しています。

「文言や趣旨の明確化を求める」という意見は、規制に反対しているという意味ではありません。規制の射程がどこまで及ぶかを確認しなければ、自社の実務対応ができないという意味です。

着荷主規制は、物流会社が知っておけばよい制度ではありません。製造業、小売業、卸売業の調達部門、購買部門、店舗運営部門も含めて、自社の受入条件を見直す必要があります。

製造業の調達部門や物流部門が、自社の納品受入条件を法令リスクとして確認しなければならない時代になったということです。

5.発荷主が確認すべきこと

発荷主は、納品先で何が起きているかを把握する必要があります。

運送事業者と契約しているのは発荷主です。運送事業者が追加費用を請求する相手も、通常は発荷主です。

しかし、荷待ちや契約外作業を発生させているのが着荷主である場合、発荷主はその費用をどのように扱うのかを考えなければなりません。

納品先で長時間待機が発生しているにもかかわらず、その情報が発荷主に上がっていないことがあります。契約上は車上渡しや通常の荷降ろしまでのつもりでも、現場では棚入れ、仕分け、検品補助まで求められていることがあります。納品時間の変更や再配達が、着荷主側の都合で発生しているにもかかわらず、その費用が運送事業者に残っていることもあります。

発荷主にとって問題なのは、納品先で起きていることを「着荷主の現場の話」として切り離してしまうことです。

自社が運送を委託し、自社の商品を納品している以上、納品先でどのような待機や作業が発生しているかを把握できていなければ、物流事業者との取引管理として不十分になる可能性があります。

発荷主と着荷主との間で、納品条件をどのように決めているのか、契約外の作業が発生した場合にどのように扱うのか、運送事業者に追加費用が発生した場合に誰が負担するのかを整理する必要があります。

着荷主規制は、発荷主にとっても「納品先の問題」ではありません。

6.着荷主が確認すべきこと

着荷主は「運送会社とは直接契約していない」「運賃を支払っているのは発荷主だ」と考えてきたかもしれません。

令和9年4月1日以降は、その整理だけでは足りません。

着荷主が、納品現場で運送事業者に待機や追加作業を求めている場合、その行為が発荷主や物流事業者に負担を生じさせていないかが問われます。

納品受付でトラックを長時間待たせていないか。検品が終わるまで荷降ろしを止めていないか。契約外の棚入れや仕分けを求めていないか。納品場所の変更や再配達を現場判断で求めていないか。

現場担当者を責めるだけでは解決しません。問題は、現場での指示が運送契約の範囲に含まれているのか、追加費用が発生する作業なのか、誰がその費用を負担するのかが曖昧なままになっていることです。

着荷主規制への対応は、社内研修だけでは終わりません。納品条件、受入体制、荷降ろし現場での指示、検品の進め方、棚入れや仕分けの扱いを、取引条件として説明できる状態にしておく必要があります。

この確認は企業ごとに事情が異なります。自社だけで整理しきれない場合には、早い段階で外部の視点を入れるべきです。

7.着荷主規制への対応は、現場確認から始まる

着荷主規制の導入により、確認すべき範囲は広がります。

発荷主は、運送事業者との契約だけを見ていればよいわけではありません。着荷主は、直接契約がないから関係ない、とは言えなくなります。

当法人では、物流取引における荷主・着荷主側のリスクを確認する物流下請法リスク診断を行っています。まず30分の無料相談から対応しています。

納品先の一言が、物流事業者の負担になっていないか。

令和9年4月1日以降、着荷主はその問いから逃げられなくなります。

法人代表 楠本浩一(くすもと こういち)プロフィール

同志社大学卒業後、パナソニックの物流部門および物流子会社にて20年以上、物流法務と契約管理に従事。荷主企業と物流会社の双方での実務経験を持ち、現場の課題と制度の両面を熟知しています。

現在は行政書士として独立し、「荷主責任」を切り口に物流コンプライアンスの実務指導・契約チェック・社内研修を展開。『物流下請法』の著者として、出版やセミナーを通じて最新の法改正や実務対応を提言し、制度改善に向けた提言活動にも取り組んでいます。荷主責任に関する実務指導の第一人者として、高い評価を得ています。

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