- 自社の取扱貨物重量が年間9万トン以上かどうかを、出荷だけでなく、入荷・拠点間輸送・物流子会社経由の輸送まで含めて確認していない。
- CLOを選任する予定はあるが、その人が営業・調達・生産・販売部門に対して、発注条件や納品条件の見直しを求められる立場かどうかを確認していない。
- 中長期計画を物流部門だけで作成しようとしている。
- トラックバース予約システムや配車システムを入れれば、物流効率化法への対応は進むと考えている。
- 荷待ち時間や荷役時間の短縮を進める一方で、運送会社との契約、附帯作業、価格協議、支払条件までは整理していない。
1つでも当てはまる場合は、CLO選任の前に、社内体制と物流取引の実態を確認する必要があります。
物流効率化法は、CLOを選任して終わる制度ではありません。CLOを中心に、荷主企業の発注条件、納品条件、受入体制、取引条件を動かすことが求められています。
この記事の結論|3分でわかるCLO対応
物流効率化法におけるCLOとは、法律上は「物流統括管理者」と呼ばれる役職です。特定荷主・特定連鎖化事業者が、物流効率化の取組を社内で統括するために選任する責任者です。単なる物流部門の責任者ではありません。
CLOには、荷待ち時間、荷役時間、積載効率を改善するために、営業、調達、生産、販売、在庫管理、物流、法務、経営企画をまたいで社内を動かす役割があります。
前年度の取扱貨物重量が年間9万トン以上の特定荷主・特定連鎖化事業者には、CLOの選任、中長期計画の作成、定期報告の提出などが義務づけられています。2026年4月1日から、特定荷主等への規制的措置が開始されています。
ここで注意すべきなのは、出荷だけではなく、入荷や拠点間輸送も確認する必要があることです。第一種荷主と第二種荷主の立場を分けて、自社がどの貨物の移動に関与しているかを確認しなければなりません。
物流統括管理者は、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者から選任する必要があります。この根拠となるのが、物資の流通の効率化に関する法律第47条第2項です。同項では、物流統括管理者について、特定荷主が行う事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者をもって充てなければならない旨が定められています。
ただし、「役員を選べばよい」という意味ではありません。物流を知らない役員を形式的にCLOにしても、実務は動きません。一方で、物流部長であっても、営業、調達、生産、販売などに対して調整や指示ができない場合は、CLOとしては弱くなります。
物流効率化法では、荷待ち時間・荷役時間の短縮、積載効率の向上が重要なテーマです。具体的には、ドライバー1人あたり年間125時間の荷待ち・荷役時間の削減、積載効率を現状の約40%から約44%へ引き上げることが目標として示されています。
CLOは、この数値目標を中長期計画に落とし込み、定期報告で説明できる状態にする責任者です。単に「努力します」と書くだけでは足りません。どの拠点で、どの輸送で、どの時間を短縮し、どの便の積載効率を上げるのかを、社内で確認できる状態にする必要があります。
特定荷主等が物流統括管理者を選任しなかった場合、100万円以下の罰金が科される可能性があります。また、選任の届出を怠った場合は、20万円以下の過料に処せられるとされています。ただし、実務上重いのは罰金額だけではありません。対応が不十分と判断された場合には、行政対応、取引先への説明、社内監査、役員報告が必要になります。
物流効率化法は、荷待ち時間、荷役時間、積載効率を改善する法律です。一方で、運送会社との個別取引には、取適法、物流特殊指定、貨物自動車運送事業法が関係します。CLOは、物流効率化法だけを見ればよいわけではありません。効率化を進める過程で、運送会社へ一方的な条件変更や追加作業を求めれば、別の法令上の問題が生じます。
この記事を書いた人
行政書士 楠本浩一(行政書士法人運輸交通法務センター 代表)
パナソニックの物流部門・物流子会社にて20年以上、全国100か所以上の物流拠点に入り、契約、発注、支払、附帯作業、荷待ち、荷役、委託先管理の実務を確認してきました。
著書:荷主と物流会社のための物流下請法と「法令違反」防止ガイド
1.物流効率化法のCLO(物流統括管理者)とは
物流効率化法におけるCLOとは、法律上は「物流統括管理者」と呼ばれる役職です。特定荷主・特定連鎖化事業者に指定された企業が、物流効率化の取組を社内で統括するために選任する責任者です。
ここで重要なのは、CLOが単なる物流担当者ではないという点です。
物流効率化法は、トラック会社だけを変える法律ではありません。荷主企業の発注条件、納品条件、受入体制、販売計画、調達条件、在庫管理、物流拠点の運用まで含めて見直す法律です。
荷待ち時間が長い原因が、物流センターのトラックバース不足だけであれば、物流部門でも一定の対応はできます。しかし実際には、午前中に納品が集中している、営業部門が短納期に応じている、調達部門が細かい納品条件を設定している、生産部門の出荷が月末に集中している、受入現場の検品手順が複雑である、といった事情が絡みます。
このような問題は、物流部門だけでは解決できません。
CLOは、物流部門の代表ではありません。社内の物流条件を見直す責任者です。
物流効率化法において、CLOは「物流の改善を報告する役職」ではありません。物流に関する社内の意思決定を動かす役職です。

2.CLOの選任が必要になる特定荷主とは|9万トンの算定
物流効率化法では、すべての荷主に努力義務が課されます。そのうえで、一定規模以上の荷主は「特定荷主」として指定され、中長期計画の作成、定期報告、CLOの選任などの法的義務を負います。特定荷主の基準は、前年度の取扱貨物重量が年間9万トン以上であることです。
第一種荷主と第二種荷主の違い
荷主には第一種荷主と第二種荷主があります。
- 第一種荷主:自社の事業に関して貨物の運送を委託する側です。製造業、卸売業、通販会社などが、出荷のために運送会社へ運送を委託する場合が典型です。
- 第二種荷主:運送契約の当事者ではない場合でも、自社の事業に関して貨物を受け取る側、または貨物の受渡しに関与する側です。小売店、工場、配送センターなどが、サプライヤー側の手配したトラックから納品を受ける場面がこれに当たります。
製造業であれば、得意先への出荷では第一種荷主、原材料や部品の受入れでは第二種荷主になることがあります。
出荷だけを見て「9万トンに届かない」と判断するのは危険です。入荷、拠点間輸送、物流子会社や3PLを介した輸送も含めて、自社がどの立場で貨物の移動に関与しているのかを確認する必要があります。
9万トンの算定方法
9万トンの算定方法には、実測値のほか、単位数量当たりの重量と数量による計算、容積からの換算、トラックの最大積載量または平均積載量と台数による推計、売上額・仕入額からの推計など、複数の方法があります。算定方法そのものを届出に細かく記載しない場合でも、後から説明できる記録を残しておく必要があります。
特に、物流子会社や3PLを利用している企業は注意が必要です。「物流子会社に任せているから関係ない」とは限りません。誰が運送契約を締結しているかだけでなく、誰が物量、出荷計画、納品条件、リードタイム、受入条件を決めているかを確認する必要があります。
選任しなかった場合の罰則
特定荷主がCLOを選任しない場合、選任命令違反として100万円以下の罰金が科される可能性があります。届出だけを怠った場合も、20万円以下の過料の対象になります。金額より深刻なのは、対応が不十分と判断された場合の勧告・公表です。取引先や社内への説明が必要になります。
3.施行スケジュールと対応期限
物流効率化法の対応は、段階的に始まっています。
荷待ち時間の短縮、荷役時間の短縮、積載効率の向上に取り組むことが全荷主に求められています。
CLOの選任、中長期計画の作成、定期報告の提出が必要になります。
特定荷主として指定通知を受けてから対応を始めるのでは、間に合わない可能性があります。
以降、原則として毎年7月末に定期報告を行う必要があります。
貨物重量の算定、CLO候補者の選定、現状データの収集、中長期計画の作成、部門横断の調整には時間がかかります。年間9万トンに近い企業、複数拠点を持つ企業、物流子会社や3PLを利用している企業は、早めに確認を始めるべきです。
4.CLOは誰を選ぶべきか
CLOの選任で最も重要なのは、肩書きではありません。社内の物流条件を動かせる実質的な権限があるかどうかです。
物資の流通の効率化に関する法律第47条第2項では、物流統括管理者について、特定荷主が行う事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者をもって充てなければならないとされています。
ただし、「役員であれば誰でもよい」という意味ではありません。物流を知らない役員を形式的にCLOにしても、実務は動きません。一方で、物流部長であっても、営業、調達、生産、販売、在庫管理、物流拠点に対して調整や指示ができる立場であれば、候補になり得ます。
判断基準は、次の3点です。
- 社内の発注条件や納品条件に口を出せるか。
- 物流に関する投資判断や改善計画を経営会議に上げられるか。
- 運送会社、倉庫会社、3PL、取引先との協議を社内の正式な判断として進められるか。
CLOに必要なのは、物流の現場知識と経営判断の両方です。
物流部門に閉じた人選でも弱い。物流を知らない役員への形式的な兼任でも弱い。ここがCLO選任の難しいところです。
5.名ばかりCLOで終わる3つの失敗パターン
CLO対応で最も避けるべきなのは、選任届だけ出して実務が動かない状態です。物流効率化法では、CLOを置くことそのものが目的ではありません。CLOを中心に、中長期計画、定期報告、荷待ち時間、荷役時間、積載効率を改善する体制を動かすことが目的です。
(1)物流を知らない役員への形式的な兼任
1つ目は、物流をほとんど知らない役員に、とりあえずCLOを兼任させるケースです。総務、経理、管理部門の役員であっても、社内横断の権限を持ち、物流の課題を理解して動ける人であれば問題ありません。
しかし、物流現場、運送会社との取引、荷待ち、荷役、附帯作業、発注条件、納品条件を理解しないまま名義だけCLOになると、中長期計画が現場から浮いた文書になります。この場合、計画は作れても実行できません。物流部門が作った資料を承認するだけのCLOでは、制度の趣旨に合いません。
(2)権限のない物流部長をCLOにするケース
2つ目は、物流部長をCLOにしたものの、他部門に対する権限がないケースです。物流部長は現場をよく知っています。運送会社との関係も分かっています。荷待ちや附帯作業の実態も理解しています。CLO候補として有力であることは間違いありません。
しかし、営業部門の短納期対応を見直せない、調達部門の納品条件を変更できない、生産部門の出荷集中に意見できない、経営会議で投資判断を上げられないのであれば、CLOとしては不十分です。物流効率化の課題は、物流部門の外にあります。CLOに必要なのは、物流部門の知識だけではなく、社内の意思決定を動かす力です。
(3)中長期計画を物流部門だけで作らせるケース
3つ目は、中長期計画を物流部門だけで作らせるケースです。中長期計画には、積載効率、荷待ち時間、荷役時間の改善が必要になります。しかし、これらの原因は物流部門だけにあるわけではありません。
- 小口多頻度出荷は、営業や販売の都合から生まれます。
- 午前中納品の集中は、取引先との納品条件から生まれます。
- ドライバー荷役は、受入現場の人員配置や検品ルールから生まれます。
- 発注ロットや納品頻度は、調達条件や販売計画とつながっています。
物流部門だけで中長期計画を作ると、現場の改善策は並ぶものの、会社全体の条件変更に踏み込めません。その結果、計画は立派でも、定期報告の段階で実績が伴わないという状態になります。
6.CLOが主導すべき3つの実務
CLOが担う実務は、大きく3つあります。中長期計画、定期報告、そして社内横断の改善体制です。
(1)中長期計画の作成
CLOがまず主導すべきなのは、中長期計画の作成です。中長期計画では、積載効率の向上、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮について、現状、課題、実施措置、目標、実施時期を整理します。
ここで重要なのは、中長期計画を「様式を埋める作業」にしないことです。中長期計画は、行政に提出する文書であると同時に、社内の物流改善を動かす文書です。対象拠点、対象輸送、現状値、課題、目標、実施措置がつながっていなければ、計画として弱くなります。CLOは、単に計画書を承認するのではなく、その計画が社内で実行できるかを確認する必要があります。
中長期計画の具体的な作成手順については、別記事「物流効率化法|特定荷主の中長期計画の書き方【記載例付き】」で詳しく解説しています。
(2)定期報告に耐えられる記録管理
次に重要なのが、定期報告に耐えられる記録管理です。物流効率化法対応では、計画を作って終わりではありません。毎年度、取組状況や実績を報告する必要があります。
ここで問題になるのは、記録です。荷待ち時間を短縮したと言うなら、どの拠点で、どの時間を、どのように測定したのかを説明できなければなりません。荷役時間を短縮したと言うなら、どの作業を誰が担い、どのように時間が変わったのかを説明できる必要があります。積載効率を改善したと言うなら、どのルートで、どの便を、どのように集約したのかを示す必要があります。
CLOは、定期報告の数字だけを見るのではなく、その数字を支える現場記録を整える役割を担います。
(3)荷待ち・荷役時間・積載効率を動かす社内調整
3つ目は、社内調整です。
荷待ち時間の短縮には、トラックバース予約システムの導入だけでは足りません。予約枠が午前中に集中すれば、結局は待機が発生します。荷役時間の短縮には、パレット化だけでは足りません。検品工程、荷受人員、受入ルール、ドライバー荷役の扱いを見直す必要があります。積載効率の向上には、配車システムだけでは足りません。小口多頻度出荷、短納期、月末集中、出荷ロット、納品頻度を見直す必要があります。
デジタル化は必要です。しかし、システムを入れただけでは、発注条件も納品条件も変わりません。CLOが本当に担うべきなのは、データを見た後に、社内の条件を変えることです。
7.システムを入れてもCLO対応が終わらない理由
物流効率化法への対応では、トラックバース予約システム、配車システム、受発注システム、在庫管理システム、輸配送管理システムなどの導入が検討されます。これらは重要です。データがなければ、荷待ち時間も荷役時間も積載効率も把握できません。
しかし、システム導入だけではCLO対応は終わりません。
- システムで荷待ち時間が見えるようになっても、午前中納品の集中が変わらなければ待機は残ります。
- 配車データを可視化しても、小口多頻度出荷が変わらなければ積載効率は上がりません。
- 荷役時間を計測しても、ドライバーに検品・棚入れ・ラベル貼りを任せ続ければ、荷役時間は短縮されません。
データを見た後に、社内の誰が条件を変えるのか——ここでCLOが必要になります。CLOは、システムを入れる人ではありません。システムで見えた課題を、社内の発注条件・納品条件・受入体制の見直しにつなげる人です。
また、効率化を急ぐあまり、運送会社に一方的な条件変更を求めれば、取適法や物流特殊指定上の問題になる可能性があります。
- 荷待ち時間短縮を名目に、運送会社側へ事前作業を追加で求める。
- 積載効率向上を名目に、運送会社へ無理な配送条件を押し付ける。
- 荷役時間短縮を名目に、運賃や附帯作業料を一方的に引き下げる。
このような進め方は、物流効率化法への対応であると同時に、別の法令リスクを生む可能性があります。CLO対応では、システム、現場、契約、発注、支払、価格協議を同時に見なければなりません。
8.なぜ物流部門だけではCLOの任務を果たせないのか
物流効率化法対応で最も大きな誤解は、「物流の法律だから物流部門が対応すればよい」という考え方です。実際には、物流効率化を止めている原因の多くは、物流部門の外にあります。
- 営業部門が短納期に対応し続ければ、緊急配送が増えます。
- 調達部門が細かい納品条件を維持すれば、荷待ちや荷役が増えます。
- 生産部門の出荷が月末に集中すれば、トラックの手配は難しくなります。
- 販売計画が直前まで固まらなければ、出荷ロットは小さくなります。
- 受入現場の検品手順が複雑であれば、ドライバーの拘束時間は長くなります。
CLOが機能するかどうかは、ここを動かせるかで決まります。
物流部門だけが努力しても、営業が短納期に応じ続ければ、車両手配は逼迫します。調達が価格だけで運送条件を決めれば、運送会社との関係は悪化します。現場がドライバーに附帯作業を任せ続ければ、荷役時間は短縮されません。
9.CLOと取適法・物流特殊指定・貨物自動車運送事業法の関係
CLO対応で見落としやすいのが、物流効率化法だけを見てしまうことです。物流効率化法は、荷待ち時間、荷役時間、積載効率の改善を求める法律です。一方で、運送会社との個別取引には、取適法、物流特殊指定、貨物自動車運送事業法が関係します。
たとえば、荷役時間を短縮するために、ドライバー荷役をやめて荷主側で作業を引き取るのであれば、方向性としては健全です。しかし、荷役時間を短縮するという名目で、運送会社へ一方的に運送条件を変更させたり、運賃を下げたりすれば、取適法や物流特殊指定の問題になります。
また、荷待ち時間を短縮すると言いながら、現場では棚入れ、ラベル貼り、検品、片付けなどを無償でドライバーに依頼していれば、物流効率化法対応としても不十分ですし、物流特殊指定や貨物自動車運送事業法上の荷主対応としても問題になります。
CLOは、物流効率化法だけを見ればよいわけではありません。物流効率化法、取適法、物流特殊指定、貨物自動車運送事業法を同時に見なければ、荷主企業として説明できる物流管理にはなりません。
4法律の違いについては、別記事「特定運送委託とは何か|4類型・対象外・荷主の義務【2026年版・取適法対応】」で詳しく整理しています。
10.CLO体制を作るために最初に確認すべき5項目
CLOを選任する前に、荷主企業が確認すべきことがあります。
(1)第一種荷主・第二種荷主ごとの9万トン該当性
まず、自社が特定荷主に該当する可能性を確認します。前年度の取扱貨物重量が9万トン以上かどうかを、第一種荷主・第二種荷主の立場ごとに確認します。出荷だけでなく、入荷、拠点間輸送、物流子会社・3PLを介した輸送も確認が必要です。
(2)荷待ち時間・荷役時間・積載効率の現状データ
次に、物流の現状データを集めます。荷待ち時間、荷役時間、積載効率、主要ルート、主要拠点、納品時間帯、出荷集中、附帯作業の有無を整理します。ここで数字がなければ、中長期計画は書けません。感覚ではなく、記録をもとに確認する必要があります。
(3)契約・発注・支払条件
さらに、契約・発注・支払の確認が必要です。運送契約書、物流委託契約書、発注書、運送依頼書、支払条件、価格改定協議の記録、附帯業務の対価設定を確認します。物流効率化を進める際に、取引条件が不明確なままだと、別の法令リスクが出ます。
(4)部門横断の会議体
CLO対応は物流部門だけでは進みません。営業、調達、生産、販売、物流、法務、経営企画を含む会議体が必要です。この会議体で、発注条件、納品条件、受入条件、出荷集中、附帯作業、投資判断を扱えるようにしておく必要があります。
(5)CLO候補者の権限
最後に、CLO候補者の権限を確認します。その人が、営業、調達、生産、販売、在庫管理、物流、法務、経営企画を動かせる立場にあるか。経営会議に物流課題を上げられるか。運送会社や取引先との協議を社内判断として進められるか。中長期計画の実行状況を追えるか。CLO候補者の肩書きよりも、社内で実際に何を決められるかが重要です。
11.CLO選任後に荷主企業が整えるべき社内体制
CLOを選任したら、次に必要なのは社内体制です。
- CLOの権限を明確にする:CLOが中長期計画を作成するだけでなく、関係部門に改善を求める権限を持つことを社内で明確にします。
- 物流データを集める体制を作る:荷待ち時間、荷役時間、積載効率は、物流部門だけでは把握できないことがあります。現場、倉庫、運送会社、3PL、販売管理システム、受発注システムの情報をつなげる必要があります。
- 部門横断の会議体を作る:営業、調達、生産、販売、物流、法務、経営企画が入らなければ、発注条件や納品条件は変わりません。
- 取引先・運送会社との協議の場を作る:物流効率化は、荷主だけで完結しません。ただし、荷主側が一方的に条件変更を押し付ける形になれば、取適法や物流特殊指定の問題が生じます。
- 定期報告に向けた記録保管を行う:改善した内容、協議した内容、決定した内容、実施した内容を残さなければ、後から説明できません。
物流に関する判断を、社内で動かし、記録し、説明できる状態にすることです。肩書きではありません。
12.よくある質問
Q1 CLOは物流部長でもよいですか。
物流部長でも候補になります。ただし、物流部門内の調整しかできない場合は弱いです。営業、調達、生産、販売、在庫管理、経営企画などに対して、発注条件や納品条件の見直しを求められる立場であることが重要です。
Q2 役員をCLOにすれば十分ですか。
十分とは限りません。物流を理解していない役員を形式的にCLOにしても、中長期計画は動きません。役員であることより、物流実態を理解し、社内の条件変更を進められるかが重要です。
Q3 CLOを選任しなかった場合はどうなりますか。
特定荷主・特定連鎖化事業者が物流統括管理者を選任しない場合、選任命令違反として100万円以下の罰金が科される可能性があります。また、届出だけを怠った場合も、20万円以下の過料の対象になります。金額より深刻なのは、勧告・公表、取引先への説明、社内監査、役員報告です。
Q4 CLOを選任すれば物流効率化法対応は完了しますか。
完了しません。CLOの選任は入口です。中長期計画、定期報告、荷待ち時間、荷役時間、積載効率、社内体制、記録管理まで整える必要があります。
Q5 システムを導入すればCLO対応になりますか。
システム導入は必要です。ただし、それだけでは足りません。データを可視化しても、発注条件、納品条件、受入体制、附帯作業、価格協議が変わらなければ、改善は進みません。CLOは、システム導入後に社内条件を動かす役割を担います。
Q6 取適法や物流特殊指定もCLOが見る必要がありますか。
必要があります。物流効率化法は効率化の法律ですが、運送会社との個別取引には取適法や物流特殊指定が関係します。荷待ち時間や荷役時間を改善する過程で、運送会社に不当な負担を押し付ければ、別の法令上の問題になります。
Q7 9万トンの算定に物流子会社経由の輸送は含まれますか。
含まれる場合があります。物流子会社を使っている場合でも、自社の貨物の物量や納品条件を実質的に決めているのが親会社であれば、親会社が荷主として算定対象になる可能性があります。「物流子会社に任せているから関係ない」という判断は危険です。
Q8 CLOは法務部門が担当すべきですか。
法務部門だけで担当するのは難しいです。CLO対応には、物流現場、発注条件、納品条件、契約、支払、価格協議、行政提出書類のすべてが関係します。法務部門は重要ですが、物流部門・営業部門・調達部門・経営企画部門と一緒に動く必要があります。
13.まとめ|CLOは肩書きではなく、荷主の物流責任を動かす役割です
物流効率化法のCLOは、単なる役職名ではありません。CLOは、荷主企業が自社の物流条件を見直し、荷待ち時間、荷役時間、積載効率を改善し、中長期計画と定期報告に耐えられる体制を作るための責任者です。
物流部門だけでは、CLOの任務は果たせません。営業、調達、生産、販売、在庫管理、物流、法務、経営企画をまたいで、発注条件、納品条件、受入体制、附帯作業、価格協議、支払条件を確認する必要があります。
- CLOは、物流部門の代表ではなく、社内の物流条件を見直す責任者です。
- システム導入だけでも、選任届だけでも、様式記入だけでも、物流効率化法対応は終わりません。
- 荷主企業として、物流に関する説明責任を果たせる状態を作ることが大切です。
- 物流効率化法、取適法、物流特殊指定、貨物自動車運送事業法を同時に見る必要があります。
14.物流効率化法・CLO対応を進める荷主企業へ
行政書士法人運輸交通法務センターでは、物流効率化法、取適法、物流特殊指定、貨物自動車運送事業法を踏まえ、荷主企業の物流法務対応を支援しています。
まず自社の対応状況を整理したい場合は、下記物流下請法リスク診断をご確認ください。
物流効率化法対応・CLO選任・中長期計画・取適法・物流特殊指定の対応を継続的に整えたい場合は、物流ガバナンス設計プロジェクトもご確認ください。
15.監修者紹介・法人紹介
監修者:行政書士 楠本 浩一(くすもと こういち)![]() |
| 行政書士法人 運輸交通法務センター 代表社員/行政書士 著書『荷主と物流会社のための物流下請法と「法令違反」防止ガイド』 |
パナソニックの物流部門において物流法務を専任で担当。その後、物流子会社へ出向し、同社においても物流法務の責任者を務めました。荷主側と物流会社側の双方で法務責任を担い、契約実務、委託先管理、現場運用の確認までを含む実務を20年以上にわたり経験してきました。
主な実務領域
講師・掲載実績

行政書士法人 運輸交通法務センター
行政書士法人 運輸交通法務センターは、その名称の通り、運送・物流分野に特化した専門家集団です。
行政書士の独占業務である許認可手続にとどまらず、荷主企業向けの物流取引管理、契約・現場運用・支払の確認にも力を入れています。
- 荷主側の物流発注ルールの見直し ・契約内容と現場運用の確認
- 待機時間・附帯作業を含めた物流実務の点検
- 「物流下請法」を軸とした社内管理体制の整備
製造業・流通業・小売業といった荷主企業に対し、問題が起きてから対応するのではなく、契約、発注、現場運用、支払の流れを事前に確認し、説明できる状態に整える物流法務を重視しています。
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