物流特殊指定改正パブコメで当法人の意見が取り上げられました

物流特殊指定改正パブコメで当法人の意見が取り上げられました

2026年6月17日、公正取引委員会が公表した物流特殊指定改正案の意見募集結果に、当法人が提出した意見が取り上げられました。

着荷主が運送事業者・ドライバーへ直接指示する行為が、改正後の規制対象から漏れるのではないかという問題提起が、意見公募結果No.12に反映され、公正取引委員会の考え方として一定の解釈が示されています。

今回の意見募集では66件の意見が提出され、物流特殊指定、支払告示、支払告示運用基準、優越的地位の濫用に関する考え方の改定案について、公正取引委員会の考え方が示されました。改正物流特殊指定および支払告示は、令和9年4月1日から施行される予定です。

私が提出した意見は2件です。

1件目|括弧書き・直接指示の問題

1件目は、新設条文の括弧書きにある「特定発荷主が運送を受託する事業者に当該提供の行為をさせる場合に限る」という文言についてです。

このままでは、着荷主が運送事業者・ドライバーへ直接指示する行為が対象外になってしまうおそれがあるため、括弧書きの削除、または着荷主が運送事業者へ直接指示した場合に発荷主経由とみなす規定の追加を求めました。

2件目|報復措置・通報者保護の問題

2件目は、報復措置と通報者保護に関する意見です。

発荷主が着荷主を公正取引委員会に通報する仕組みだけでは、実際の取引関係上、十分に機能しにくいこと、また運送事業者・ドライバーからの申告、匿名申告、間接的報復、指示記録の保存といった論点を整理する必要があることを指摘しました。


この記事を書いた人
行政書士 楠本浩一(行政書士法人運輸交通法務センター 代表)
パナソニックの物流部門・物流子会社にて20年以上、全国100か所以上の物流拠点に入り、契約、発注、支払、附帯作業、荷待ち、荷役、委託先管理の実務を確認してきました。
著書:荷主と物流会社のための物流下請法と「法令違反」防止ガイド

目次

1.告示本文は変わらなかった

結論からいえば、今回のパブリックコメントによって、告示そのものを動かすことはできませんでした

特定発荷主が運送を受託する事業者に当該提供の行為をさせる場合に限る」という文言は残りました。

したがって、私が求めた括弧書きの削除や、着荷主が運送事業者へ直接指示した場合に発荷主経由とみなす規定の追加までは実現していません。

この点は、冷静に見ておく必要があります。

物流現場では、着荷主の担当者が、発荷主を通さず、運送事業者やドライバーに対して直接指示する場面が少なくありません。

たとえば、現場で急に荷降ろし、仕分け、棚入れ、ラベル貼り、再配達、納品時間の変更などを求められるケースです。

このような現場実態に対して、今回の改正物流特殊指定がどこまで対応できるのか。ここが、私の問題意識でした。

2.No.12に意見が取り上げられた意味

もっとも、今回の意見提出には一定の成果がありました。

特にNo.12では、私が提出した1件目の意見、すなわち「特定発荷主が運送を受託する事業者に当該提供の行為をさせる場合に限る。」という文言では、特定着荷主が運送事業者に対して直接指示する行為が対象外になってしまうのではないか、という問題提起が、意見の概要としてかなり近い形で取り上げられました。

これに対して公正取引委員会は、改正物流特殊指定第2項について、特定着荷主が特定発荷主に対して一定の行為をすることにより、特定発荷主の利益を不当に害することを禁止するものであり、いずれの行為も「特定発荷主」が「運送を受託する事業者」に当該提供、変更、やり直しの行為をさせる場合に限られると説明しています。

そのうえで、公正取引委員会は、これらの行為には、特定着荷主が特定発荷主の運送事業者を通じて特定発荷主に要請する場合だけでなく、特定着荷主が特定発荷主に直接要請する場合も含まれる、との考え方を示しました。

これは重要です。

つまり、着荷主が運送事業者に対して言ったことが、すべて当然に対象外になるわけではありません。

着荷主から運送事業者に要請があり、その要請が運送事業者を通じて発荷主に伝わり、発荷主の指示・確認・関与を経て附帯業務や運送内容の変更が行われる場合には、改正物流特殊指定の対象となり得ることが示されたからです。

告示本文の修正までは行われませんでした。

しかし、「着荷主から運送事業者への直接指示は常に対象外」という狭い整理ではないことが、公正取引委員会の考え方として示された点は、一歩前進と評価できます。

3.ただし、完全な解決ではありません

一方で、今回の回答によって問題が完全に解消されたわけではありません

公正取引委員会は、別の箇所で、特定発荷主の指示や関与が一切なく、運送事業者の判断で附帯業務等が行われた場合には、「特定発荷主が運送を受託する事業者に当該提供等の行為をさせる場合」には当たらず、改正物流特殊指定第2項の禁止行為には該当しないとの考え方も示しています。

ここが、今回の改正に残された大きな課題です。

たとえば、着荷主の現場担当者がドライバーに対して、「ついでに棚入れまでしておいてください」、「今日は別の場所に降ろしてください」、「予定と違うが、もう一度持ってきてください」、「この荷物はここで待っていてください」と指示した場合でも、それが発荷主に確認されず、発荷主の指示・関与もないまま、運送事業者の現場判断で対応してしまった場合には、改正物流特殊指定第2項の対象から外れる可能性があります。

つまり、今回の公正取引委員会の回答は、着荷主から運送事業者への直接指示のすべてを対象にしたものではありません

対象となり得るのは、あくまで着荷主の要請が、発荷主への要請、発荷主の確認、発荷主の指示・関与に接続している場合です。

ここを誤解してはいけません。

4.運送事業者が取るべき対応

今回の回答を踏まえると、運送事業者側の対応は明確です。

着荷主から現場で、契約外の荷役作業、附帯業務、荷待ち、納品場所の変更、再配達などを求められた場合、その場で単独対応して終わらせるべきではありません

まず発荷主に確認すること。

そして、メール、チャット、配車システム、作業指示書、業務報告書など、あとから確認できる方法で記録を残すことが重要です。

着荷主から言われたので対応しました」だけでは不十分です。

  • 誰から、いつ、どのような作業を求められたのか。
  • その内容を発荷主に確認したのか。
  • 発荷主はどのように回答したのか。
  • 追加作業や待機時間、再配達に要する費用を誰が負担するのか。

これらを残しておかなければ、後日、費用請求や責任分担をめぐって争いになったときに説明が困難になります。

5.発荷主が取るべき対応

発荷主にとっても、今回の回答は重要です。

着荷主から運送事業者を通じて要請が入った場合、それを曖昧なまま放置すると、発荷主が運送事業者に当該作業をさせたものと評価される可能性があります。

発荷主としては、着荷主との間で、次のような点をあらかじめ整理しておく必要があります。

  • 荷降ろし、仕分け、棚入れ、検品補助などの附帯業務を誰が行うのか。
  • 荷待ちが発生した場合の費用を誰が負担するのか。
  • 納品時間や納品場所の変更があった場合の追加費用をどう扱うのか。
  • 再配達や持ち戻りが発生した場合の費用負担をどうするのか。
  • 現場担当者が運送事業者に直接指示できる範囲をどう決めるのか。

これらを契約書、取引条件、物流仕様書、納品条件、作業ルールなどに落とし込んでおく必要があります。

「現場でうまくやっているから大丈夫」という考え方は、今後通用しにくくなります。

6.着荷主が取るべき対応

着荷主側も、「当社は運送会社と直接契約していないから関係ない」と考えるのは危険です。

今回の公正取引委員会の回答では、特定着荷主が特定発荷主の運送事業者を通じて特定発荷主に要請する場合も、改正物流特殊指定第2項の対象に含まれることが示されています。

つまり、現場担当者が運送事業者やドライバーに対して行った指示が、運送事業者を通じて発荷主への要請として整理される可能性があります。

着荷主としては、納品現場での指示ルールを整備する必要があります。

現場担当者がドライバーに直接依頼してよいこと、してはいけないこと。

  • 契約外の荷役作業や納品条件変更が必要になった場合の発荷主への連絡方法。
  • 追加費用が発生する場合の負担ルール。

これらを社内で整理しておかなければ、現場担当者の一言が、改正物流特殊指定上の問題につながる可能性があります。

7.報復措置・通報者保護に関する意見

私が提出した2件目の意見は、報復措置と通報者保護に関するものでした。

この点についても、意見公募結果のNo.16、No.17、No.18、No.35に関連する形で取り上げられています。

No.16|運送事業者による申告と通報者保護

No.16では、運送事業者が公正取引委員会に申告する場合も通報者保護の対象に拡大すべきではないか、という意見が取り上げられました。

これに対して公正取引委員会は、着荷主と運送事業者との間に取引関係がない場合には、着荷主が運送事業者に対して取引量削減などの不利益を与えることは想定されないため、特定着荷主の報復措置の対象に運送事業者を加える必要性はない、との考え方を示しています。

この点は、私の意見が採用されたわけではありません。

むしろ、運送事業者を報復措置の対象に含めることについては、否定的な回答だったと見るべきです。

No.17|間接的報復の明確化

No.17では、「その他不利益な取扱い」の具体例を告示や運用指針で列挙し、単価引下げなどの間接的報復を明示すべきではないか、という意見が取り上げられました。

これに対する回答は、「御意見として承ります」にとどまっています。

No.18|指示記録・受領記録の保存

No.18では、着荷主に受領記録・指示記録の作成・保存義務を課し、立証責任の転換を検討すべきではないか、という意見が取り上げられました。

こちらも、回答は「御意見として承ります」にとどまっています。

No.35|匿名申告の可否

No.35では、匿名での申告を明示的に認めるべきではないか、という意見に対し、公正取引委員会は、何人も独占禁止法に違反する事実があると思料するときは公正取引委員会に報告でき、匿名での報告も可能であると説明しています。

ただし、事件の端緒として取り上げて調査するかどうかを判断するためには、できるだけ匿名は避けることが望ましいとの考えも示されています。

このように、報復措置や通報者保護については、意見としては取り上げられたものの、制度の変更や明確な運用基準の追加までは行われていません。

ここにも、今後の課題が残っています。

8.実務上の結論

今回のパブリックコメントを踏まえると、実務上の結論は明確です。

改正物流特殊指定は、着荷主による荷待ち、荷役、附帯作業、運送内容の変更、運送のやり直しに対して、一定の規律を及ぼすものです。

しかし、制度は万能ではありません

特に、着荷主から運送事業者・ドライバーへの直接指示については、発荷主の指示・確認・関与にどう接続されるかが重要になります。

  • 運送事業者は、着荷主からの現場指示をその場で処理して終わらせるのではなく、発荷主への確認と記録を残す必要があります。
  • 発荷主は、着荷主から運送事業者を通じて要請が入った場合の対応ルールを整備する必要があります。
  • 着荷主は、現場担当者が運送事業者に直接指示する範囲と手順を明確にする必要があります。

これから必要になるのは、単に「物流特殊指定を知っている」ことではありません。

現場で誰が、誰に、何を指示し、その費用や責任を誰が負担するのか。

この点を、契約書、物流仕様書、納品条件、作業指示、記録方法に落とし込み、あとから説明できる状態にしておくことです。

9.今回のパブリックコメントの意義

今回のパブリックコメントでは、告示本文を変えることはできませんでした。

しかし、着荷主から運送事業者を経由して発荷主へ要請されるルートも対象となり得ることが、公正取引委員会の考え方として示されました。

これは、物流現場で起きている直接指示の問題に対し、制度が一定程度向き合ったものと評価できます。

一方で、着荷主から運送事業者・ドライバーへの直接指示を、それだけで全面的に対象化したわけではありません

発荷主の指示・確認・関与がないまま、運送事業者の現場判断で対応した場合には、なお対象外となる可能性が残ります。

つまり、今回の回答は「完全な解決」ではなく、「一定の前進」です。

だからこそ、今後の実務では、着荷主、発荷主、運送事業者の間で、現場指示、附帯業務、荷待ち、再配達、費用負担の取扱いを明確にしておく必要があります。

物流特殊指定の改正は、単なる法改正ではありません。

これまで現場で曖昧に処理されてきた「誰が頼んだのか」「誰が負担するのか」「誰の都合で発生した作業なのか」を、取引条件として明確にし、記録に残し、あとから説明できる状態にしておくための転換点です。

法人代表 楠本浩一(くすもと こういち)プロフィール

同志社大学卒業後、パナソニックの物流部門および物流子会社にて20年以上、物流法務と契約管理に従事。荷主企業と物流会社の双方での実務経験を持ち、現場の課題と制度の両面を熟知しています。

現在は行政書士として独立し、「荷主責任」を切り口に物流コンプライアンスの実務指導・契約チェック・社内研修を展開。『物流下請法』の著者として、出版やセミナーを通じて最新の法改正や実務対応を提言し、制度改善に向けた提言活動にも取り組んでいます。荷主責任に関する実務指導の第一人者として、高い評価を得ています。

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